〔あおき葬祭コラム〕第64回:如来・菩薩、それぞれの種類とその役割について

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仏教を信じる人が手を合わせ、信心の対象とするもののひとつとして「仏像」があります。仏像とは美術品のうちの1カテゴリーであると同時に、人の心のよりどころでもあります。今回はこの仏像と、その仏像の元となった如来・菩薩について取り上げ、その種類について解説していきます。

<如来の意味とその種類について>

「如来」とは仏教用語のうちのひとつであり、「欠けるところのない人格者」を表す言葉のうちのひとつです。真理を知り、それを体得している者とされていて、下界に降り来て迷いのある人を救ってくださると考えられています。

如来像は、さまざまな宗派で崇拝の対象となっています。ただ「如来」にはいくつかの種類があり、どれをご本尊とするかは宗派によって異なっています。

如来のなかでも、今回は日本で特に親しまれている4つの如来について解説していきます。

【釈迦如来】

「しゃかにょらい」と読みます。仏教の開祖である釈迦を表す(あるいはその姿をかたどった仏像そのものを表す)言葉として知られています。

「釈迦」自体は実在の人物ではありますが、「釈迦如来」と呼ばれるかたちにされる場合は、非常に特徴的な描かれ方をします。

もっとも有名なのは、「螺髪(らはつ)」でしょう。仏様の髪の毛は、渦を巻いたような形の丸いものが並んでいます。私たちが「仏様」と聞いてイメージするこの髪の毛は、釈迦の深遠な知恵を表すとされています。

また、手は印を描いています。右手の印は人の恐怖を除き、左手の印は人の頼みを聞くためのものだとされています。

なお釈迦如来の場合、装飾品はまといません。釈迦自体が清貧を重んじた人物であったこともあるかもしれませんが、すでに悟りをひらいた姿を現した「釈迦如来」には、彼を飾る飾りは必要ないとされているのです。

曹洞宗や臨済宗のご本尊として祀られています。

【阿弥陀如来】

「あみだにょらい」と読みます。

天台宗・浄土真宗・浄土宗・真宗大谷派と、多くの宗派のご本尊として祀られています。

阿弥陀如来は西方にあるとされている極楽浄土を統べる人であるとされています。

「読経」「念仏」を重んじる宗派によって信じられている阿弥陀如来とその両脇に配された菩薩は、「念仏を唱えた人のことを極楽浄土に連れていってくださる存在だ」と考えられています。

なおこのときに使われるのが、ハスの花をイメージさせる台座です。「ハスの花」は仏教の花としてよく知られており、仏教で使われる不祝儀袋(香典袋)にも印刷されていることがあります。

【薬師如来】

「やくしにょらい」と読みます。

法相宗などでこの薬師如来を本尊としますが、薬師如来の場合、どちらかというと「病気の人間を救ってくださる仏様」という印象の方が強いかもしれません。

薬師如来はその名前の通り、手に薬の壺(薬壺。やっこ)を持っています。そのなかには万病に効くといわれている薬が入っていて、後天的に得た病も先天的に得た病も治してくださると信じられています。

「現世の苦しみである病から、人々をお救いくださる」ということで、薬師如来像は特に多くの人に信じられ、大切にされています。

【大日如来】

「だいにちにょらい」と呼びます。

密教において非常に重んじられる如来像であり、日本では真言宗などがこの大日如来を本尊としています。

非常にきらびやかな外見を持っているのが大日如来の特徴で、宝石をつけた冠をつけていたり、華やかな首飾りをつけていたり、はっきりと主張する腕輪などをつけていたりします。

その存在は「宇宙」を泡ラスとされていて、一部の宗派では「大日如来こそが絶対的な存在である」と解釈します。

<菩薩の意味とその種類>

優しい人などを評して「菩薩だ」とすることがありますが、これももともとは仏教用語です。

「菩薩」という言葉は非常に多くの意味を持つものであり、

・上記のように、優しく寛大な人を指す

・釈迦の修業時代の姿を指す

・現在において、悟りを得るために修行を積む人を指す

・如来に至る前の姿

などの意味があります。なお菩薩は女性的な姿で描かれることもありますが、もともとが「釈迦の修業時代の姿を指す」というところからも分かる通り、基本的には男性の姿であると解釈されることも多いといえます。

また今回は、主に「如来に至る前の姿としての如来」を取り上げ、その種類について解説していきます。

【十一面観音】

「じゅういちめんかんのん」と読みます。

非常に特徴的な姿をした菩薩像であり、一目見ればすぐに十一面観音とわかるでしょう。

十一面観音はその名前の通り、頭の上に11個の顔を有しています。

この11個の顔には意味があり、「あらゆる人のあらゆる苦悩を見て、それを救うためである」と解釈されています。11個の顔で世界中の隅々をあらゆる角度から見て、万人を救済してくださる存在であると十一面観音は考えられているのです。

ただ十一面観音の場合、「菩薩」という言葉からは想像もつかないほど厳しい顔も持っています。怒りを表す顔などもあり、非常に表情が豊かです。

なお十一面観音は、非常に早い時期に作られた菩薩のかたちとされています。「だれのことも取り落とさずに救ってほしい」という願いが込められていたのかもしれません。

【弥勒菩薩】

「みろくぼさつ」と読みます。

釈迦が旅立ってから56億7000万年後に釈迦の後継者となる菩薩であると言われていて、その際に人々を救うとされています。

非常に重要な役目を果たすとされている菩薩であり、日本で特に人気の高い菩薩でもあります。

56億7000万年後のために修行を積んでいる最中であるため、現在は座った姿で考え込んでいる姿で描かれることが多いといえます。

また柔和なほほえみをたたえる姿もよく描かれており、昔から認知度の高い菩薩だといえます。

【観音菩薩】

「かんのんぼさつ」と読みます。

観音菩薩はさまざまな別名を持っており、「観世音菩薩」「聖観音」「救世菩薩」などとも呼ばれます。また単純に「観音さま」としたときは、この観音菩薩を指すことが多いといわれています。

観音菩薩は宗派にとらわれず、苦しみ悩み惑う人々に救いの手を差し伸べてくださる菩薩だとされています。その慈悲深さに多くの人が救いを求めてきたといわれています。

観音菩薩は水の入ったカメを持っていますが、その中に入った水は決して枯れることがないと伝えられています。また、般若心境のなかにも観音菩薩は登場します。

非常に美しい装飾品を身に着けていて、宝石のついた冠などを戴いています。

【地蔵菩薩】

「じぞうぼさつ」と読みます。

私たちにとってもっとも身近な菩薩といえば、この「地蔵菩薩」「お地蔵さん」なのではないでしょうか。昔話にも、このお地蔵さんが出てきますね。

非常に親しみやすい雰囲気を持つ菩薩であり、道などに置かれていることも多いといえます。

柔和で愛らしいこの菩薩は、常に弱き者の味方であるとされていて、特に子どもを守護する役目を担っています。

素朴でおだやかな表情でそっと人に寄り添うことのできる菩薩は、昔からごく身近な存在として人々に受け入れられてきました。

また地蔵菩薩は、上で挙げた「弥勒菩薩」が人間の元にやってくる56億7000万年もの間、人々を助けるために存在するともいわれています。

ここでは特に有名な如来・菩薩を紹介してきました。

人々は長きにわたり、彼らに救いを求め祈りをささげてきました。

「自分にとってなじみやすい如来・菩薩さまはだれか」を探ってみるのも面白いものですね。