世界には数多くの宗教がありますが、そのなかでも「五大宗教」と呼ばれるものは
・仏教
・キリスト教
・ヒンズー教
・イスラム教
・ユダヤ教
です。ここではこの5つに、さらに日本でなじみ深い「神道」を加えて、その教義と成り立ちを紹介していきます。
<長い歴史を持つ仏教とキリスト教>
仏教とキリスト教は、非常に長い歴史を持つものです。
まずはこの2つの歴史と特徴について解説していきます。
【仏教】
紀元前6世紀ごろにインドで興った宗教であり、ゴーダマ・シッダールタを開祖とします。
ゴーダマ・シッダールタは長い旅のなかで悟りを開き、それを多くの弟子に伝えました。
仏教はやがて中国に渡り、そこから日本に伝わっていくことになります。
中国や日本で非常に信徒が多い宗教ですが、その故郷であるインドではもはや衰退してしまっています。外部勢力の侵攻や支持母体の衰退などがこの原因といわれています。
非常に長い歴史を持つ仏教は、その過程でさまざまな宗派を生み出します。また仏教を祖とする新興宗教も数多く誕生しました。
現在の日本においては「在来仏教(浄土宗・浄土真宗・華厳宗など13個ある)」と「新興仏教(仏教系新宗教とも。創価学会など)」に分けられています。在来仏教は宗派ごとに考え方に違いがあるものの非常に長い歴史を持っているものであり、たいして新興仏教は比較的成立した時期が近代寄りである宗教をいいます。
今の日本ではお寺が運営する墓地であっても「生前の宗教・宗派は不問とする」としているところが多くみられますが、それでも「在来仏教に限る」として分けているところもあります。
仏教の教義は宗派によって異なりますが、基本的には「お釈迦様を信じ、帰依することで救われる」とします。厳しい修行などを行う宗派もありますが、「ただ南無阿弥陀仏と唱えるだけで救われる」とする宗派・浄土宗もあります。この考え方は特に民衆に広く親しまれ、現在でも脈々と受け継がれる教えとなりました。
【キリスト教】
紀元30年ごろに起こった宗教だとされていて、後述するユダヤ教を基礎とします。ちなみにだれもが知るイエス・キリストは、「信者が窮地に立たされたときに救ってくださる救い主である」とされました。
現在のパレスチナ南部で興った宗教であり、その後ヨーロッパ全土に広がりました。大航海時代にはアメリカやアフリカ、そしてはるか遠くオーストラリアのあたりにまで広まったため、非常に信徒の多い宗教だといえます。
キリスト教は、大きく「カトリック」と「プロテスタント」に分けられます(「ロシア正教会」をここに含める場合もあります)。
カトリックではローマ教皇を最高指導者として位置づけますが、プロテスタントでは最高指導者を擁きません。またカトリックの場合は聖母マリアを強く崇拝しますが、プロテスタントではこれを礼拝の対象とはしていません。また、カトリックの教会は荘厳で豪奢なものになることが多いのですが、プロテスタントでは簡素なかたちをとります。
ちなみに、間違われやすい「牧師」と「神父」ですが、カトリックの場合は「神父」とし、プロテスタントの場合は「牧師」とします。
なお「神父」は妻帯を許されていませんが、カトリックではこれを許容しています。また、プロテスタントの場合は信者の離婚を許容していませんが、カトリックでは「個々人の自由」としています。
<ヒンズー教・イスラム教・ユダヤ教・そして神道>
2つの大きな宗教を見てきたところで、ここからは「ヒンズー教」「イスラム教」「ユダヤ教」、そして「神道」について取り上げます。
【ヒンズー教】
キリスト教や仏教も長い歴史を持ちますが、ヒンズー教も紀元前25世紀ごろ~紀元前15世紀ごろに起こったとされる非常に古い宗教です。「何をもって、どこをもって世界最古の宗教とするか」については議論が分かれますが、ヒンズー教を最古の宗教とする見方もあります。
インド生まれの宗教ですが、その進化の過程でバラモン教などを取り込んでいきました。非常に多くの信徒を抱えていますがその地域はかなり限定的であり、インドやネパールのあたりだけにとどまります。また、日本ではほとんどみられません。
ヒンズー教の考え方のなかでもっとも有名なのは、やはり「カースト制度」でしょう。人の身分を「バラモン(司祭者)」「クシャトリア(貴族・王族)」「バイシャ(平民)」「スードラ(賤民)」に分けています。カーストの違う人間同士は結婚ができず、また差別からくる痛ましい事件も多く起こっています。
肉全般を避ける傾向にありますが、特に牛は「神聖な動物である」として避けられます。
ヒンズー教では「ヴェーダ」と呼ばれる聖典を重要視します。「多神教の宗教である」とされていますが、宗派によって考え方は異なります。ただ、いずれにせよ、ヒンズー教は上で述べた「カースト制度」に代表されるように、その在り方は「宗教」という枠組みを超え、社会基盤そのものを作る意思ともなっています。
【イスラム教】
「世界三大宗教」というと、イスラム教とキリスト教、そして仏教を指すことが多いといえます。
現在のアラビアで生まれた宗教であり、絶対神としてアッラーを擁きます。アッラーこそが唯一絶対の噛みであり、イスラム教を興したマホメット(ムハンマド)はそのアッラーの使徒であるととらえています。
610年あたりに成立した宗教ですが、これは恐ろしい速さで西アジアに向かって伝播していきます。これはイスラム教の教義が、「人は貧富に関係なく、アッラーの前では平等である」としていたからだと考えられています。
コーランに基づく厳格な生活軌範が定められていて、「女性は貞節を守るためにヒジャブというスカーフによって髪(や目以外のすべて)を隠すべし」「1日に5回の礼拝を行うべし」「豚は食べてはいけない」などのようにされています。
アッラーへの絶対服従を近い、「イスラム教の教えを広めていくための戦争は、ジハード(聖戦)としてとらえられる」という教義を持ちます。
【ユダヤ教】
キリスト教の基本ともなった宗教です。
唯一神「ヤハウェ」を戴く宗教であり、「ユダヤ人は神によって選ばれた存在である」とします。また、救世主信仰もあります。
紀元前18世紀ごろに生まれた宗教だと考えられていて、「モーセによる海割り」などで知られています。窮地にあったエジプトの民を救うためにモーセが海を割って彼らを助けた……とする逸話です。
聖書の教えを遵守し、食べられる食材や作法も決められています。「食べても良い」とされる食材は「コーシェル」と呼ばれます。肉食を避ける傾向にありますが、鶏肉のスープや魚などは許容されます。
【神道】
「世界五大宗教」とされたときには除外される神道ですが、日本では非常にメジャーなものです。
明確な開祖は存在せず、日本において自然発生的に生じた宗教だと考えられます。
「八百万の神」という言葉に象徴されるように、非常に多くの神を持ちます。万物に精霊が宿ると考えるため、一神教とはまったく意を異とします。
また明確な経典や聖地も持ち得ないものであり、非常に「間口の広い」宗教だと解釈されます。
かつては仏教と神道が一緒になっていたのですが(神仏混淆)、明治時代の「神仏分離」を経て分けられました。ただこの2つは今も共通したところが多いといえます。
「神のおわすところ」である神社を聖域ととらえるため、ここでは葬儀を行いません。食事に関しても明確な制約はなく、肉食や飲酒も許容されています。ただし、大きな宗教的儀式が行われる場合は、ごく短期間だけ肉を控えるなどの対応がされることもあります。
世界には数多くの宗教があり、そのすべてを網羅することは不可能です。
また、宗教は正しい・正しくないと言えるものではありません。相手の信仰にも自分の信仰にも敬意を払っていきたいものですね。