〔あおきの葬祭コラム〕第120回:なぜ樹木葬が選ばれる?樹木葬を選択する人の理由とは?

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

「樹木葬」は、現在非常に人気を博している埋葬形態です。

ここではこの「樹木葬」を取り上げて、その意味や歴史、特徴、そしてなぜ樹木葬が人気を博すようになったのかについて解説していきます。

<樹木葬の歴史と種類、その特徴について>

「自然のなかに故人を埋めて土に還す」という埋葬形態は、古今東西、あらゆるところでみられているものです。

しかしそれが「樹木葬」として日本に明確に位置付けられたのは、1999年のことだとされています。岩手県にあるお寺がこのやり方を提唱し始めたのが、日本における「(現代的な)樹木葬」の初めだといわれています。

さてこの「樹木葬」は、大きく

・里山型

・公園型

の2つに分けられています。

里山型とは山林のなかに埋葬する方法をいい、1999年に初めて作られた樹木葬墓地もこの形式をとっていました。公園型よりもより自然に近い環境で眠ることができるのが魅力ですが、アクセスがしにくいなどの問題点もあります。

対して公園型とは、ある程度人の手が入った樹木葬霊園であり、散歩などを楽しむこともできるようになっていることが多いといえます。なおこの「公園型」のなかでも、「特に小さく、西欧風の形式をとっているものを『ガーデニング型』という」「ごく一部のスペースにのみシンボルツリーなどが植えられていて、景観を重要視しているのを『庭園タイプ』という」などの説もあります。

公園型は里山型に比べてアクセスがしやすくバリアフリー化もされていますが、自然との一体感という意味では里山型に及びません。

樹木葬の形式は非常に多くありますが、「木の下で眠ることができる」「継承者を必要としない」「原則として宗教にとらわれない」などの特徴は共通しています。

このことを念頭においたうえで、「なぜ人は樹木葬を選ぶのか、樹木葬が人気になった理由は何か」について解説していきます。

<樹木葬が人気になった理由7つ>

樹木葬は現在非常に多くの人に指示されている埋葬形式です。その理由として、以下の7点が挙げられます。

・自然のなかに還ることができる

・継承者がいなくても問題ない

・原則として、宗教にとらわれずに埋葬ができる

・墓地を一から購入するよりも安い

・血縁関係がなくても一緒に眠ることができることが多い

・ペットと一緒に眠ることができる

・「手を合わせる対象」がある

ひとつずつ見ていきましょう。

・自然のなかに還ることができる

上でも述べたように、樹木葬は「自然のなかに還ることのできる埋葬形態」です。お墓の下に眠り続けるのではなく、自然のなかで眠ることができます。

里山型にしろ公園型にしろ、四季の移り変わりを感じながら過ごすことができるのは、樹木葬の大きなメリットです。

なお「海が好きだ」という人の場合は、同じ「自然のなかで眠る形式」でも、海洋葬の方が推奨されます。

・継承者がいなくても問題ない

樹木葬は、多くの場合、「一定期間ご家族(個人)だけで眠っていて、一定期間経過後にほかの人と合葬される」もしくは「初めから合葬される」という形式を取ります。なかにはずっとご家族だけで眠ることのできる樹木葬霊園もありますが、いずれの場合であっても、運営団体がある程度手入れをしてくれるため、墓所が荒れる可能性は極めて低いといえます。

継承者がいなくても運営団体が面倒を見ていくため、「独身である」「子どもはいるが遠方に嫁いでいる」「子どもに負担をかけたくない」という人にとって、樹木葬は非常に選びやすい選択肢となるでしょう。

・原則として、宗教にとらわれずに埋葬ができる

すでに述べた通り、日本での樹木葬霊園の「開祖」ともいえる団体は「お寺」でした。しかし樹木葬は、そのほとんどすべてが、「生前の宗教・宗派に関わらずに申し込める」という形式を取っています。寺院の管理する樹木葬霊園であっても檀家になる必要はなく、お寺とのしがらみも生まれません(※ただし寺院の運営する樹木葬霊園を選んだ場合は、毎月の供養などはその宗派に合わせた形式で行われることもあります)。

このような特徴を持つため、樹木葬は、「菩提寺―檀家の関係を作りたくない」という人はもちろん、「日本においては非常に珍しい宗教を信じているため、その宗教独自の墓地はなかなか見つけることができない」という人にもよく選ばれています。

・お墓を一から購入するよりも安い

樹木葬は選ぶプラン・樹木葬霊園の場所によっても異なりますが、50万円程度で申し込むことができるケースが多いといえます。お墓を一から建立するときにかかる費用の平均はおおむね170万円程度ですから、それに比べれば費用の負担は非常に軽いといえます。

ただ、しばしば誤解されるのですが、これは「お墓を一から購入する場合との比較」です。すでに先祖代々のお墓がある場合で、そしてそこに入ることに抵抗感がない場合は、お墓に埋葬した方が費用はずっと安く抑えられます。

・血縁関係がなくても一緒に眠ることができることが多い

現在は「血縁関係がない人でも一緒に入ることのできる墓地」の選択肢も提示されるようになってきていますし、婚姻関係にない同性同士でも眠ることのできる寺院墓地なども提案されるようになっています。

しかしそれでも、血縁関係がない人同士で同じお墓に入ろうとすると、血縁関係がある人同士が同じお墓に入ろうとする場合に比べて選択肢が狭くなってしまうのは事実です。

しかし樹木葬霊園の場合、このような制限は基本的にはありません。同性のパートナー同士や友人同士でも一緒に埋葬できるケースが大半です。

・ペットと一緒に眠ることができる

仏教では、動物と人間を明確に分けて考えます。そのため従来型の寺院墓地では、人間とペットが一緒に眠ることは原則としてできません。「ペット用のお墓のスペース」を設けているところはありますが、これは「ペットの遺骨だけを埋葬する場所」であることが原則で、人間と一緒に眠ることができるわけではありません。

しかし樹木葬の場合は、ペットの遺骨も持って一緒に入ることができるケースが多いといえます。なおその場合は、「先立ったペットを最初に墓所に入れておいて、後から人間が入る」というやり方ではなく、「人間が入るときに、ペットの遺骨も一緒に入れる」というやり方をとるのが基本です。

・「手を合わせる対象」がある

樹木葬と海洋葬は「自然のなかで眠る弔いの方法である」という点では同じです。しかし海洋葬はご遺骨を散骨にするため、「散骨したピンポイントの場所」でお参りをすることはできません。それに対して樹木葬の場合は、シンボルツリーという「手を合わせる対象」が明確に存在します。

人の死生観はさまざまですが、「手を合わせる対象が欲しい」と考える人は少なくありません。海洋葬ではそのあたりのフォローが難しいというデメリットがありますが、樹木葬の場合はこのデメリットが存在しません。そのためご家族・ご親族の説得もしやすいということで、樹木葬という形式を選ぶ人もいます。

樹木葬は、多様化していく現在のライフスタイルによくマッチした埋葬形態だといえます。ただ、もちろん「樹木葬の選択肢がベストで、それ以外の選択肢はダメだ」ということはいえません。

大切なのは、樹木葬が選ばれる理由を知り、それをかみ砕き、ほかの埋葬方法との違いを比較したうえで、「自分(と家族)の希望に合致する埋葬方法はどれか」を考えていくことなのです。