〔あおき葬祭コラム〕第73回:世界の宗教事情~国によって異なる宗教に対する価値観

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「どのような宗教を信じるか」は、個人の価値観によるところが大きいといえます。しかし同時に、「A国では〇〇という宗教の信者数が多く、B国では▽▽という宗教の信者数が多い」とはいえます。

今回は「世界の宗教事情」として、それぞれの国・地域でよく信じられている宗教について取り上げます。

<最も多くの信者数を抱えている宗教は?>

東京基督教大学国際宣教センター日本宣教リサーチが2018年の4月に出した「JMR調査レポート(2017年度)」によれば、2016年の段階で世界で最も多くの信者数を獲得しているのはキリスト教だということです。

キリスト教は、世界の宗教信徒数のうちの32.9パーセントを占めており、世界のうちの3分の1程度の人がこのキリスト教を信じているということがわかります。

なおキリスト教は、「カトリック」「プロテスタント」によく分けられます。しかしキリスト教自体に注目した場合は、さらに「東方正教会」「カトリック・プロテスタント・東方正教会のいずれにも当てはまらないが、キリスト教系の宗派」が追加されます。

このなかでもっとも多くの信者を獲得しているのは「カトリック」であり、これがキリスト教信者のうちの半数以上(50.7パーセント)を占めます。次に続くのが「プロテスタント」であり、これが22.6パーセント、東方正教会は11.6パーセント、そしてそれ以外の宗派が15.1パーセントとなっています。

世界三大宗教の1つとしても数えられているのがこの「キリスト教」ですが、残り2つの「イスラム教」と「仏教」についてもみていきましょう。

同データにおいては、「イスラム教の信者」が世界の宗教信徒数に占める割合は、23.6パーセントとのことです。つまり、4人に1人くらいがイスラム教を進行しているということになります。

そして世界三大宗教の残り1つである「仏教」は、7.0パーセントです。実のところ、仏教よりもヒンズー教の信仰者の比率の方が大きく、こちらは13.7パーセントとなっています。

キリスト教とイスラム教と仏教とヒンズー教の4つを合わせると、実に77.2パーセントにもなります。つまり全世界のうちの8割近くの人が、この4つの宗教のいずれかを進行しているということになるのです。

ほかの宗教(中国民間宗教や新宗教、ユダヤ教など)はいずれも10.0パーセントを超えません。

出典:東京基督教大学国際宣教センター日本宣教リサーチ「JMR調査レポート(2017年度)」https://www.tci.ac.jp/wp-content/uploads/2015/08/JMR_report_2017.pdf

<世界の宗教をみていこう! それぞれの国の割合とは>

もう少し詳しくみていきましょう。

たとえば韓国では、「無宗教」の割合がもっとも多く、56.1パーセントを占めています。2位には「キリスト教(プロテスタント)」が入っており、19.7パーセントとなっています。そして3位には「仏教」の15.5パーセント、4位に「キリスト教(カトリック)」の7.9パーセントがランクインしています。

特筆すべきは、「無宗教人口の多さ」と、「キリスト教信者の多さ」です。韓国では近年宗教離れが進んでいます。2005年には無宗教の人の割合は47.1パーセントと半数を切っていましたが、10年の間にこれが56.1パーセントにもなりました。

また、「キリスト教」は「カトリック」と「プロテスタント」に分けても2位と4位に入っており、非常に割合が多いことがわかります。この2つを足して「キリスト教」と考えた場合、27.6パーセントとなり、3人~4人に1人はキリスト教を信仰していることがわかります。仏教よりもキリスト教の信者数が多いことを、少し意外に思われる人もいるかもしれませんね。

世界第2位の人口を誇る国である「インド」についてもみていきましょう。

インドの場合、この膨大な人口のうちの実に79.8パーセントがヒンズー教を信仰しています。残りの20.2パーセントのうち、イスラム教を信仰する人が14.2パーセント、キリスト教を信仰する人が2.3パーセントとなっています。

注目すべきは、「インドには仏教徒は極めて少ない」という点です。インドにおいて仏教を信じている人の割合は、わずか0.7パーセント程度です。

言わずと知れたことですが、インドは仏教が産まれた国です。そうであるにも関わらず、インド仏教は非常に少数の信徒数を確保するにとどまっています。

これは、

・インドの歴史のなかで、僧侶が殺されたり寺が破壊されたりする時期があった

・ヒンズー教などはわかりやすい教義を持っていたが、インド仏教の教義は非常に分かりにくかった

・信者数を確保しようとした結果、インド仏教の教えが変質し、本質を見うなってしまった

ことなどが原因と考えられています。

ヨーロッパに分類される「ドイツ」についても解説していきます。

ドイツも近年宗教離れが進んでいる国であり、2010年の段階では「無宗教である」と答えた人が40パーセントに達そうとしています。2000年以前はなんらかの宗教を信じている人が多かったのですが、この年を境目に、徐々に「特定の宗教を信じない人」が増えていったわけです。

特定の宗教を信じる人のなかで最も比率が高いのは、「カトリック」と「プロテスタント(エバンゲリッシュ)」です。この2つがそれぞれ30パーセント近くを占めています。

なおイスラム教を信じている人もいますが、これは5パーセントにも達していません。日本ではおなじみの仏教などに関しては、「その他」とまとめられており、個別の集計結果として取り上げられることはあまりないほどに少数です。

出典:東京基督教大学国際宣教センター日本宣教リサーチ「JMR調査レポート(2017年度)内『韓国の宗教人口(韓国統計庁、2016年12月)』」https://www.tci.ac.jp/wp-content/uploads/2015/08/JMR_report_2017.pdf

株式会社国際協力銀行「インドの投資環境」

https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/images/inv_india01.pdf

ドイツニュースダイジェスト「ドイツにおける宗教事情」

http://www.newsdigest.de/newsde/news/featured/7650-1021/

<日本では「信者数」ならば神道系が多く、包括宗教法人としては仏教系が多い>

それでは、日本の場合はどうなのでしょうか。

「日本では神道と仏教がよく信じられている」と考えている人も多いことでしょう。

これは正しい認識であり、日本では神道と仏教の信者が圧倒的多数です。

文化庁が出した最新の統計結果である「宗教統計調査結果 令和元年12月31日現在 全国社寺教会等宗教団体・教師・信者数」から、その数字をみていきましょう。

これによれば、神道系を信仰している信者の数は8895万9345人、仏教系を信仰している信者の数は8483万5110人ということでした。信者数の全体数は1億8310万7772人ですから、神道系を信仰している人の割合は47.3パーセント、仏教系を信仰している人の割合は44.9パーセントであると計算できます。つまり、神道系と仏教系を合わせた割合は92.2パーセントとなり、ほとんどの人が神道系あるいは仏教系を信仰しているということがわかります。世界規模で見た場合にもっとも多い信者数を獲得しているキリスト教も、日本においては109万9757人の信者数にとどまり、全体の1.0パーセントしかいないことも同データでは示唆されています。

なお神道系の方が仏教系よりも信者数は多いのですが、包括宗教法人(寺院や神社などを傘下に持つ法人)で見た場合は、神道系よりも仏教系の方が数が多いという特徴もあります。

もっとも日本の場合は、諸外国に比べて宗教への帰属意識がかなり薄い傾向にあります。現代の日本においては信教の自由が認められているため、宗教間での激しい争いはほとんどみられません。国際空港に設けられた礼拝室やイスラム教徒向けのメニューの提案、生前に信仰していた宗教を問わない状態で埋葬できる墓地、年末年始のクリスマス(キリスト教)~除夜の鐘(仏教系)~初詣(主に神道系)のイベントなどは、その象徴ともいえるものでしょう。