〔あおき葬祭コラム〕第118回:お釈迦さまの誕生日、知っていますか?~花まつりに行うこと

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

日本には仏教徒は多くいますが、クリスマスとは異なり、「お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の誕生日は知らない」という人は多くいます。

今回はこの「お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の誕生日」に焦点を当てて、

・そもそもお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の誕生日はいつ?

・お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の誕生日のエピソード

・お釈迦さまの誕生日に行うこと

について解説していきます。

<お釈迦さまの誕生日は、4月8日です>

(異論や諸説はあるものの)クリスマスがイエス=キリストの誕生日だということは、多くの人が知っていることです。しかしお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ。以下、お釈迦さまが悟りを開く前までの段階については並列表記、それ以降は『お釈迦さま』と記す)の誕生日については知らない人が多いのではないでしょうか。

お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の誕生日は、4月8日だとされています。

彼はおそらく紀元前の566年の4月8日に生を受けたといわれています。お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)はもともと、現在のインドに存在した釈迦族の王子としてこの世に誕生しました。ちなみに「お釈迦さま」という名前は、この「釈迦族」から来ているとも言われています。

お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)は、王であるシュッドーダナーと、その妃であるマーヤーの間に生まれました(※父王・母妃とも、その名前の表記にはゆらぎがあります)。

マーヤー夫人はある日、自分の右わきから胎内に白い象が入ってくる夢を見たとされています。やがてみごもったマーヤー夫人はお産のために自分の実家に帰ろうと旅を始めるのですが、そのさなか、ルンビニーの花園で美しい花に心惹かれます。「無憂樹(むようじゅ。アソーカの樹とも呼ばれる)」に咲いていたその花を手折ろうとしたとき、右わきからお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)が誕生したと伝えられています。またこのときには9匹の龍が現れ、天上から美しい水が降り注いだという伝承が残されています。

生まれたばかりのお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)は、まだ赤子であったにも関わらず、すぐに自分の足で立ち、東に向かって7歩歩みを進めます。またそのときには、右手を上にあげて天を指さし、左手は下におろして地面を指さしていたとされています。そしてそのときに、「天上天下唯我独尊」と言われたと伝えられています。

この「天上天下唯我独尊」という言葉は、現在でこそ、「この世に自分以上に偉い存在はない」という尊大さを表す表現として使われていることが多いのですが、本来の意味はこれとはまったく異なります。本来この言葉は、「天上にも天下にも、自分はただひとりとして存在しており、ほかのだれも自分に成り代わることはできない。人は、何かを加えずとも、ただ生きているだけ、ただ命があるだけで尊く、一人ひとりがかけがえのない存在なのだ」といった意味を持ちます。

このようにして誕生した釈迦族の王子は、「ゴーダマ・シッダールタ」と名付けられます。これは「願いが満たされし人」の意味を持つ言葉です。

ちなみにお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の生母であるマーヤー夫人は、不幸にもお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)を生んだ7日後に亡くなります。しかしほどなくして、マーヤー夫人の妹にあたるマハー・ブラジャパティーが父王シュッドーダナーの元に嫁ぎ、お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)はそのマハー・プラジャパティーとシュッドーダナー、そして数多くの召使いに愛され可愛がられ、何不自由のない生活を送ることになります。

しかしお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)は子どものころから世の無常さを知り、それに心を寄せて過ごすことになります。お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)は長じてから妻と子どもを得ますが、その妻と子どもと豊かな生活を捨てて、29歳のときに修行の道に入ることになるのでした。

<4月8日、花まつり~そのときには何をする? 花まつりの由来と甘茶について>

やがてお釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)は悟りを開き、広く多くの人に慕われるようになります。

そしてお釈迦さまの誕生日である4月8日は、「灌仏会(かんぶつえ)」と呼ばれる仏教行事が行われます。ちなみに日本では特にこの灌仏会を、「花まつり」として、お釈迦さまの誕生日を祝う日としています。

この花まつりの日には、参拝者に甘茶が振る舞うお寺が非常に多く見られます。また、お釈迦さまの像に甘茶をかける風習も存在しています。ちなみに花まつりの日のお釈迦さまの像は、特に「誕生仏」と呼ばれる装飾がなされたものを用います。これは、美しい花々で飾った「花御堂(はなみどう)」と呼ばれるお堂の中に入れられた仏像であり、この季節にのみ見られる仏像です。

この「甘茶」は日本ではあまりなじみのないものですが、これは「コアマチャ」と呼ばれる植物から作られている飲料です。コアマチャの葉っぱ自体は強い苦みを持つのですが、発酵させると非常に強い甘みを持つようになります。その甘みの強さは、砂糖の100倍とも1000倍ともいわれています。

甘味が貴重であった時代、この甘茶の味は多くの人にとってごちそうとなりました。また、甘茶は漢方薬の材料として使われたり、「良い政治が行われているときは、甘い露が降るのだ」という伝承の「甘い露」と結び付けられたり、不老不死をもたらす飲み物だとされたりしてきました。

加えて、上記で紹介した「お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)が生まれたときに、天に現れた龍によってもたらされた美しい水」と甘茶が関連付けられて語られることもあります。「甘茶」で、この「美しい水」を表すという考えが存在するわけです。

いずれの説を取るにせよ、甘茶がお釈迦さまへの尽きせぬ尊敬と信仰心、親しみを表すものであることには違いがありません。

「お寺に伺うことが難しいけれど、花まつりを楽しみたい」という場合は、家で甘茶を飲んで過ごすかたちをとってもよいでしょう。甘茶はスーパーなどではあまり売られていませんが、ネットショッピングなどを利用すれば気軽に買うことができます。

このように、日本の仏教のお寺においては、花まつりは非常に重要なものです。お寺によっては出店なども積極的に受け入れて、大きなイベントとしていることもあります。

ただし実はこの「花まつり」は、日本以外ではほとんど見られない行事です。つまり、お釈迦さま(ゴーダマ・シッダールタ)の生まれたインドでも、4月8日を花まつりとしてお祝いすることはほとんどないのです。その代わりに、お釈迦さまが涅槃に入られた2月15日をお釈迦さまの生誕の日としてお祝いするケースもあると伝えられています。

仏教に限ったことではありませんが、「国外が発祥地となる文化が日本に取り入れられ、そこで独自の発展や変化を告げること」はよくあります。「花まつり」の文化もまた、そのような流れのなかで生まれたものだといえるでしょう。

※現在は少し落ち着いてきたものの、花まつりの祝い方が新型コロナウイルス(COVID-19)前と異なるお寺もあるかもしれません。花まつりのときにお寺に足を運ぼうとする場合は、そのお寺のホームページなどにあたるようにすると安心です。