〔あおき葬祭コラム〕第97回:仏壇にお供えする花、生花ではければだめ?造花は?

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム

葬送儀礼と「花」は、切っても切り離せないものです。ネアンデルタール人の墓にすでに花が供えられていたことは多くの人が知っていることでしょうし、キリスト教でも仏教でも神道でもまたそれ以外の宗教の葬儀でも、「花」は基本的には葬儀のなかに組み込まれています。またここ20年ほどで、従来の白木の祭壇ではなく、花で祭壇を作る「花祭壇」が広まり、よく選ばれるようになりました。

このように葬送の場において非常によく用いられる「花」ですが、ここでは特に「仏壇に飾る花」に焦点をあててお話をしていきます。

※ここでいう「仏壇に飾る花」は、「亡くなった直後」「葬儀直後」のシチュエーションで飾る花はなく、「亡くなってからしばらく経ってから、日常的に飾る花」を指します。

<仏壇にお供えする花はどんなものがよく選ばれる?>

「ユリはNG」とされることもありますが、葬儀会社では非常によくみます。また花屋もこれを推しているので、注意書きつきで「おすすめ」としました

仏壇にお供えする花のなかで、よく選ばれるのは以下の種類です。

・キク

・ユリ

・カーネーション

ひとつずつ見ていきましょう。

・キク

仏花として長く親しまれてきた「キク」は、仏壇に飾るべき花の代表例として紹介されるべきものです。黄色のキクや白色のキクは、仏教の葬送儀礼においてほぼ必ずといって差し支えないほどの頻度でよく登場します。

仏壇にもよくお供えされる花は、美しい形を長く維持することができる花です。また、散るときも花びらが散りにくく、扱いやすいというメリットがあります。

なお、「仏花といえば、黄色いキクや白色のキク」としましたが、これは「黄色いキクや白色のキクでなければ、仏花とはいえない」「それ以外の色の花はお供えしてはいけない」というものではありません。キクはカラーバリエーションがある花であるため、故人の好きな色のキクを取り入れてみるのもよいでしょう。

・ユリ

「ユリは香りや花粉の問題があるから、葬送の場面には向かない」とする意見もありますが、実際は葬儀会社でも広く利用されていますし、仏壇に飾ることも多い花です。美しくりりしく上品に咲くユリは、非常に愛好家の多い花だといえるでしょう。「純粋」「威厳」などの花言葉を持っているため、ご先祖様をお祀りする仏壇にぴったりのお花だといえます。

仏壇にささげられるユリのカラーは、「白」が基本です。落ち着いた清浄なイメージを持つ白ユリは、仏壇に非常によくマッチします。ただ、落ち着いたピンク色のユリなどを選んでもよいでしょう。

上記でも少し触れましたが、ユリを飾るときに問題になるのが「花粉」です。ユリの花粉は、どこかについてしまうと非常におちにくく、やっかいなものです。ただこれはおしべを摘んでしまえば防げます。ユリを買ってきたならまずはおしべを取り除き、花粉の問題を解決するとよいでしょう。

・カーネーション

母の日に贈られる「カーネーション」は、可憐で美しい花びらを持ちます。華やかさとはかなさと優しさを演出できるカーネーションは、葬儀の場にもよく利用されますし、仏壇に飾ることもできるものです。ちなみに白いカーネーションの花言葉は、「今は亡き母親を偲ぶ」というものです。これは、今から100年以上も前に、アメリカに住んでいた「アンナ・ジャービス」という少女が、旅立ってしまった母親にこの花をささげたことが由来だとされています。ただ、もちろん「カーネーションは母の日の花なのだから、ほかの人が祀られている仏壇にささげてはならない」とはなりません。どのような人の位牌がある仏壇であっても、当然カーネーションをお供えとして選んで構わないのです。

カーネーションは、ピンク色や白色などの落ち着いた色が多く、カーネーションだけを集めて1つの花束にすることもできます。「優しい雰囲気の仏壇にしたい」ということであれば、カーネーションで構成した花束を使うとよいでしょう。

なお、しばしば「トゲのある花は仏壇には向かない」「色の濃すぎる花は仏壇には向かない」といわれます。たしかにこれはある意味では正しいものですし、自分が「仏壇のある親族の家に、仏壇用の花を持ってご挨拶に伺う立場である」などの場合は、このような花は避けた方が賢明です。

ただ、これは絶対的なルールではありません。

たとえば、「故人はバラを一番愛していた」「真っ赤なアネモネを好んでいた」ということであれば、これらで構成した花束を仏壇にお供えしても構いません。なぜなら、仏壇にささげる花というものはあくまで故人と仏様、そして残されたご家族のためにあるものであって、「マナーを守るためにあるもの」ではないからです。故人のことを考え、故人が愛した花を飾り、故人の心をお慰めし、それによって残されたご家族の心も癒されていく……というのが、仏壇に花を供える理由なのです。

<心がこもっていれば、当然造花でも問題ありません>

前の項目でもお話ししましたが、仏壇にお供えする花は、「故人と仏様とご家族のためのもの」です。心がこもっていさえすれば、どのような形の花を供えてもいいのです。

また、お供えする花も、「生花」に限る必要はありません。「造花」でもまったく構わないのです。

実際に、仏壇や仏具を取り扱う業者のホームページでも、「仏壇にお供えするためのもの」として、造花を打ち出しています。現在の造花は近寄って見てもすぐには造花とはわからないほど精巧に作られており、非常に美しいものです。このような造花を仏壇にお供えするのもよいでしょう。また、プリザーブドフラワーを仏壇に供えるのもひとつの地やり方です。

造花は、

・枯れる心配がない

・手入れが楽で経済的な負担が少ない

・花の種類が少ない時期でも、故人が愛した花を供えられる

というメリットがあります。

・枯れる心配がない

「枯れた花は『生命を失った花=死』につながるので、仏壇に飾ってはいけない」とする説があります。また何よりも、枯れてしまった花はなんとも寂しいものですよね。造花ならば枯れる心配もなく、いつまでも美しい姿を見せてくれます。

また、「新型コロナウイルス(COVID-19)も落ち着いたから、ちょっと長い旅行に行きたい。帰ってくる頃には枯れているだろうし花を処分しておきたいが、今はきれいに咲いているので捨てるのもしのびない……」などのように、「手入れが行き届かない時期」にも対応できます。

・手入れが楽で経済的な負担が少ない

花粉の心配がない造花は、非常に手入れが楽です。ほこりがつくことはありますが、これも手で払えば簡単におちます。

また仏壇にお供えする花束は300円~1000円程度しますが、生花であればもっても2週間くらいでしょう。しかし造花の場合は、ランニングコストがなく、非常に経済的です。

・花の種類が少ない時期でも、故人が愛した花を供えられる

現在の日本は、「花屋に行けば、一年中なにがしかの花が手に入る国」です。しかし花にも、やはり旬の時期があります。その旬の時期を過ぎてしまうと、少しやせた花しか手に入らなくなったり、売られている店が限られてしまったり、選択肢が少なくなったりします。場合によっては、「故人が一番好きだった花が手に入らない時期」が出てくることもあるでしょう。

しかし造花ならば、一年中「故人が好きな花」を飾り続けることができます。

仏壇に供える花は、何よりも「心がこもっていること」が重要です。心を込めて供える花であるのなら、生花であっても造花であっても構いません。たとえば、「お彼岸の時期は生花にして、それ以外は造花」「故人の好きな花が咲いている時期は生花で、それ以外の期間は造花」などのように使い分けるのもよいものです。