〔あおき葬祭コラム〕第70回:人の信仰を集める「十三佛」とは何か

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム

仏教では「仏さま」という概念があり、その仏さまを大切にします。このこと自体は、ごく一般的な知識として多くの人が理解していることでしょう。

しかしその仏さまのなかにどれくらいの種類があって、どのような性質を持つかまでは知らない人が大半なのではないでしょうか。

今回はそんな人のために、「十三佛」について解説していきます。

<十三佛とは、人の信仰を集める13の仏さまのこと>

「十三佛」は「じゅうさんぶつ」と読みます。なお「十三佛」は「十三仏」とも記します(ここでは「十三佛」の表記で統一します)。

その名前からも想像できる通り、十三佛は「13人の仏さま」を指す言葉です。宗派によって多少は異なりますが、仏教では基本的には「亡くなった人は49日間旅をして、そののちで行先が決まるのだ」と考えます。十三佛はその旅路を助けるための存在であると理解されています。亡くなった人のために、初七日法要~四十九日法要を行うのは、この十三佛に対して「どうぞ個人が極楽に行けるための弁護をしてください」と祈るためだといわれています。

このため、十三佛にはそれぞれ「弁護を担当するタイミング」が決まっています。

初七日法要……不動明王

二七日法要……釈迦如来

三七日法要……文殊菩薩

四七日法要……普賢菩薩

五七日法要……地蔵菩薩

六七日法要……弥勒菩薩

四十九日法要(七七日法要)……薬師如来

そしてさらに仏教では、区切りの良いタイミングで法要を行います。この法要に対応する仏さまもいます。

百か日法要……観世音菩薩

一周忌法要……勢至菩薩

三回忌法要……阿弥陀如来

七回忌法要……阿閦如来

十三回忌法要……大日如来

三十三回忌法要……虚空蔵菩薩

また仏教では「ご本尊」という考えを持ち、特定の仏さまを特に信仰の対象とすることもあります。その「特定の仏さま」を定めている宗派は、この十三佛のなかのお一人を選んでいるところもあります。

次の項目からは、十三佛のそれぞれの特徴について解説していきます。

<十三佛の役割と考え方、その仏さまをご本尊と仰ぐ宗派について>

ここからは、十三佛の持つ性質について解説していきます。

1.不動明王

「ふどうみょうおう」と読みます。初七日を担当する仏さまであり、非常に強く、男性的な姿で描かれています。剣を持った姿で描かれているため、目にすれば「不動明王であること」がすぐにわかるでしょう。

亡くなってすぐのときには、人はまだ現世に未練を残しています。しかし亡くなった人は安住の地を得るために、死後の道を旅しなければなりません。そのため不動明王は、自らの持った剣でその未練を断ち切り、冥府への旅へといざなうのです。

2.釈迦如来

「しゃかにょらい」と読みます。比較的知名度が高い仏さまと思われますので、この名前を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

釈迦如来は、仏教をひらいた「お釈迦さま=ゴーダマ・シッダールタ」のことです。このため、釈迦如来は十三佛のなかでも特に「実在の人物」として描かれます。

今まで修行を積んでこなかった人間に対しても、釈迦如来が教えを説き、冥途の旅を助けてくれると考えられています。

なお、在来仏教の主たる宗派のなかで、曹洞宗と黄檗宗はこの釈迦如来をご本尊とします。

3.文殊菩薩

「もんじゅぼさつ」と読みます。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるため、この名前もよく知られています。

ことわざでも取り上げられている通り、「知恵」の象徴的な存在であり、深い知識を持ちます。なお上で挙げた釈迦如来=お釈迦さま=ゴーダマ・シッダールタは、子どものころこの文殊菩薩について学んだとされています。

なお、釈迦如来を中心として、サイドにこの文殊菩薩と普賢菩薩(後述します)を置くことがあります。これは「釈迦三尊仏」とされています。

4.普賢菩薩

「ふげんぼさつ」と読みます。情を司る仏さまであり、慈愛の象徴ともされています。優しく柔和な表情で描かれていることが多く、さらにその奥に力強さを持っています。功徳を積んだ仏さまであり、人々が持つ煩悩を退けてくれると信じられています。そしてこの普賢菩薩の導きで、人は悟りの世界に入ると考えられています。

5.地蔵菩薩[大塚1] 

「じぞうぼさつ」と読みます。「おじぞうさま」と言われることもあり、多くの人が一度は手を合わせたことのある存在なのではないでしょうか。

お釈迦さまの出現から弥勒菩薩(後述します)の出現までには実に56億7000万年の時間が必要だといわれていますが、その間、地蔵菩薩が人々を守ってくれると信じられています。

また、地蔵菩薩は、子どもに代表されるような「弱き者」を救ってくれる仏さまだともいわれています。

6.弥勒菩薩

「みろくぼさつ」と読みます。釈迦如来の出現後、長い時間を経てから表れる仏さまであり、この弥勒菩薩の手によって未来の世が救われると考えられています。そのため特に「未来仏」と呼ばれることもあります。

なお、弥勒菩薩をご本尊と崇める宗派として、「法相宗」が挙げられます。

7.薬師如来

「やくしにょらい」と読みます。手に薬壺を持った姿で描かれることが非常に多いといえます。病に苦しむ人々を救ってくれる仏さまであり、その手に持つ薬は四十九日の旅を終えた人を極楽浄土に導くものだともいわれています。

この薬師如来を持って、初七日法要から四十九日法要まで続いていた「7日ごとの供養」は終わります。

8.観世音菩薩

「かんぜおんぼさつ」と読みます。人のス羽田に応じてお顔が変わることで知られている仏様であり、阿弥陀仏のサイドを固めることでも知られている仏さまです。

慈悲のお顔で亡くなった人を救い、阿弥陀仏の元に導くと考えられています。

9.勢至菩薩

「せいしぼさつ」と読みます。

勢至菩薩もまた知恵の仏さまであると解釈されます。また限りのない光明を持つ仏さまであり、人が抱える苦しみを消すために働く仏さまでもあります。

10.阿弥陀如来

「あみだにょらい」と読みます。三回忌を担当します。その命には終わりがなく、あらゆる人を浄土に導きます。

浄土真宗や浄土宗、時宗ではこの阿弥陀如来をご本尊とします。十三佛は基本的には「人の冥途での旅を助ける存在」として描かれていますが、浄土真宗の場合は「念仏さえ唱えれば、亡くなった人は阿弥陀如来によって即時極楽浄土に導かれる」と解釈します。このため、この宗派においては、「追悼供養」の概念はありません。

11.阿閦如来

「あしゅくにょらい」と読みます。

菩提心(ぼだいしん。悟りを追求しようとする心のこと)を持つことの重要性を説く仏さまとされていて、揺れ動かない強い心を持った仏さまとして描かれます。

12.大日如来

「だいにちにょらい」と読みます。仏教の考え方によっては、「昆盧流遮那如来(びるしゃなにょらい)と同一の存在だと解釈されます。

その姿は「太陽のようである」とされていて、輝くような光と徳を持っていると考えられています。ここに至るまでに導いてくれた仏さまの教えが、その人のなかでどれほど根を下ろしたのかを精査し、さらなる高見へと導く役割を担います。

13.虚空蔵菩薩

「こくうぞうぼさつ」と読みます。広く強い力と知恵、記憶力を持つ存在だと考えられていて、この虚空蔵菩薩の元で人は涅槃にいたります。

また、幸運を分け与えてくれる仏さまでもあります。なお、虚空蔵菩薩は三十三回忌を担当しますが、これにより、「弔い上げ」とするところも多くみられます。

十三佛の加護を知り、真摯に手を合わせたいものですね。