〔あおき葬祭コラム〕第58回:「アマビエ」とはいったい何者? SNSでも人気を博した妖怪の正体とは

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

2020年の1月から注目されるようになった新型コロナウイルス(COVID-19)は、私たちの生活様式を大きく変えることになりました。「ステイホーム」が叫ばれるようになり、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されるようになり、ほぼ毎日新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者の数が報道されるようになりました。マスクの常用が当たり前となり、マスクをしていない人や発熱がみられる人はそもそも買い物に行くことができなくなり、医療機関は追い詰められ、多くの人が亡くなりました。加えて、飲食店をはじめとする多くの店が、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けて苦境に立たされ、店を閉めるケースも多くみられるようになりました。

2021年8月初旬現在は、新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン接種が進んでいて、対策も講じられるようになっています。しかし未だに新型コロナウイルス(COVID-19)に対する確固たる明確な対抗策ができたとは言い難く、新型コロナウイルス(COVID-19)を完全に防ぎきることはまだまだ時間がかかりそうではあります。

そのような新型コロナウイルス(COVID-19)のまん延する状況下において、SNSで一気に人気を博したものとして、「アマビエ」があります。

今回はこのアマビエについて取り上げます。

<SNSで一気に流行! 公的機関も取り上げるようになった「アマビエ」とは>

「アマビエ」は「アマビエさま」「アマビエさん」「アマビエちゃん」ともよく呼ばれるものです。ここでは「アマビエ」に統一してお話ししていきます。

アマビエは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下において、非常に注目を集めたキャラクターのようなものです。新型コロナウイルス(COVID-19)が収まることなく数か月経った2020年3月くらいから、SNSにおいて、この「アマビエ」が少しずつ広がりをみせえるようになりました。

SNSには拡散機能があるものが多いことに加え、そのユニークな造形やどこかユーモラスな愛らしさを持つこと、そして新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下において非常に適合する「能力」を持っていることから、アマビエは一気にその知名度を上げました。

新型コロナウイルス(COVID-19)がまん延する前はほとんど知られることのなかったこのアマビエは、やがて国や市町村もその存在を認知―取り上げるようになりました。

たとえば厚生労働省のポスターなどでもアマビエが取り上げられるようになりました。「アマビエロゴシリーズを自由に使ってください」として、アマビエが配されたロゴが打ち出されるようになりましたし、子どもでも親しみやすい塗り絵なども誕生しました。

茨木県においては、「いばらきアマビエちゃん」というシステムがリリースされました。これは、お店などにある「感染防止対策宣誓書」に書かれている二次元コードを読み取り登録をすることで、万が一同じ日・同じところに行った人のなかから新型コロナウイルス(COVID-19)で病気になった人が出た場合は茨城県から通知が行く……というシステムです。

また、水木しげる氏など非常に有名な漫画家などがアマビエの画像を提供するなど、多くの人がアマビエを知り、それを新型コロナウイルス(COVID-19)の予防・対策に使用しているという事実もあります。

2021年に入ってからはさすがにあまり大きく取り上げられることはなくなりましたが、それでも、ツイッターをはじめとするSNSで「アマビエ」と検索すると、2021年8月の現在でもこれを話題にしている人がよくみられます。

新型コロナウイルス(COVID-19)流行前にはほとんど知られることのなかったアマビエは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けて、その存在が広く周知されるようになったものだといえます。

ではこのアマビエは、どのような存在なのでしょうか?

<アマビエっていったいどういうもの? 実はほかの妖怪と混同されたという説も>

現在ではアマビエの知名度が上がったため、多くの人が「アマビエとはこんなもの」と簡単には説明できるようになっているかと思われます。

ただここではもう少し踏み込んでこのアマビエについて解説していきましょう。

アマビエは、妖怪の一種です。半魚半人の姿をしていて、長い髪の毛と特徴的なくちばしを有しています。また「半魚」ということからも分かる通り、うろこを持っています。

新型コロナウイルス(COVID-19)が広がりを見せるなかでアマビエが注目を浴びたのは、アマビエの持つ伝承によります。

アマビエは江戸時代の瓦版にその絵と文章が記載されていたとされる妖怪であり、熊本県の海に現れたと言われていて、そのときに残したエピソードが新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下において注目されました。

そのエピソードとは、「熊本県(当時の肥後国)の海が夜ごとに光っていた。そのため役人が検めに向かったところ、アマビエが現れた。アマビエは、『今から半年の間はいろいろな国で豊作が続くが、同時に疫病が流行るだろう。疫病が流行ったなら、私の姿を描きうつした絵を多くの人に迅速に見せなさい』と言った」というものです。

ちなみにこのときには、アマビエの姿そのものを描写している挿絵はあるものの、文章などでの具体的な表記はないとされています。

2020年から現在に至るまでのアマビエに関する拡散速度やアマビエの知名度を考えると、アマビエは当時から大きく取り上げられていたもののように思う人もいるでしょう。

しかし実際にはアマビエに関する資料は決して多くなく、むしろ上記で述べたたった1件の瓦版しかないといわれています。

「瓦版には取り上げられていないけれど、土着の妖怪としてよく知られていたのだろう」と考える人もいるかもしれませんが、「アマビエを見た」「アマビエの話が受け継がれていた」という話も、アマビエの「地元」である熊本県であってすら記録がありません。つまり新型コロナウイルス(COVID-19)が流行る前には、非常にマイナーな妖怪であったことがわかります。

また、上記をしっかり読むとわかるのですが、実はアマビエ自身は「自分の姿を描いたものを人に見せよ」とは言ってはいるものの、「自分の姿を見せれば疫病を抑えられる」と言ったわけではありません。またこの時期に疫病がまん延したという記録もないといわれています。

このようなことから、「実はアマビエは、ほかの妖怪と混同されたのではないか?」とする説も出てきました。

その「ほかの妖怪」とは「アマビコ」のことです。

アマビコは、豊作や疫病を予言することができたとされる妖怪です。アマビコもまた、江戸時代の終わりくらいから取り上げられるようになりました。

アマビコはアマビエとは似ても似つかない姿をしていて、サルのような姿に描写されることが多いといわれています。

この「アマビコ」の方には、「疫病を防ぐ」とされる言い伝えもありました。アマビコを描いた護符も作られるなど、昔から無病長寿の効果のある妖怪だといわれてきたのです。

アマビコとアマビエは名前も似ているため、この2つが混同されて現在のようなかたちで伝わったのではないか……とする専門家もいます。

ただそのように混同されて伝わったものであるにせよ、また「効果の程」はどのようなものかと思う人もいるにせよ、多くの人がこのユニークでユーモラスでかわいらしい姿をした妖怪に惹かれていることは間違いありません。

突如脚光を浴びることになったアマビコは驚いているかもしれませんが、その流行の根底にあるのは、妖怪をも積極的に取り入れていく日本の文化性なのかもしれません。