〔あおき葬祭コラム〕第16回:ハロウィンとお盆の関係~この2つの共通点

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム

近年、日本でも盛大に扱われるようになってきたイベントとして「ハロウィン」があります。このハロウィンは西洋の文化ですが、日本の文化であるお盆との共通点の多いものでもあります。

今回は、もうすぐやってくるこの「ハロウィン」について取り上げ、その歴史や成り立ち、お盆との共通点について解説していきます。

<ハロウィンは元々は古代ケルトのお祭りが起源とされている>

「ハロウィンはキリスト教のイベント。キリスト教によって作り出されたお祭り」と考えている人も多いのではないでしょうか。これは、ある一面では正しく、ある一面では間違っています。

ハロウィンの原型は、古代ケルトのお祭りに由来するとされています。「ケルティックスパイラル」などの独自の文様でもよく知られていて、かつケルト神話などでも有名な古代ケルト文化は、紀元前750年ごろにまでその歴史をさかのぼることができるといわれています。

この古代ケルトの文化として、「秋の収穫時期に、感謝祭をひらく」というものがありました。このような「収穫祭」は古今東西あらゆるところでみられますが、古代ケルトの文化においても例外ではなかったわけです。

古代ケルト人は、「1年の終わりは10月31日」としていました。この「1年の最後の日」である「秋の収穫祭である日」には、亡くなった人の霊が家族の元を訪ねると考えられていました。ただそのときに寄ってくるのは善き霊だけではありませんでした。悪霊もやってきて、その悪霊が畑を荒らすといわれていたのです。このため、秋の収穫祭であるこの日は、同時に「悪霊を近づけさせないための日」でもありました。そのためにお祭りをしていたと考えられます。現在でも「ハロウィン=仮装」といわれますが、この「仮装」もまた、昔は「悪霊にさらわれないように、悪霊の仲間の格好をする」という意味があったとされています。加えて、「あの世からやってきたご先祖様が、親しみやすいように」という気持ちも込められていました。

なおこのときは、「ハロウィン」ではなく「サウィン(祭り)」といわれていたそうです。この「サウィン」が変化して「ハロウィン」になったというのが、ハロウィンの語源のうちのひとつです。

さて、この「古代ケルト人によって行われていた秋の収穫祭」は、やがてキリスト教にも広まっていくようになります。キリスト教(カトリック)では、「諸聖人の日(万聖節)」を11月1日と位置付けています。この日は、聖人や殉教者を記念する日であり、ミサを行う日とされています(もっとも、このあたりは「キリスト教のどの宗派か」によって多少考え方や日付が変わってきます)。

10月31日はその諸聖人の日(万聖節)の前夜にあたるのですが、かつては諸聖人の日を“All Hallows”としていました。その前日の夜“evening”であることから、“All Hallows”と“evening”を合わせて「All Hallows+evening(なまって“een”)」として「ハロウィン」と呼ぶようになったともいわれています。

呼び方については、「サウィンからきている」という説と、「諸聖人の日の前夜からきている」という説の両方が存在します。どちらも実にありそうな理由ですが、どちらが正しいかの決着は、恐らくつくことはないでしょう。

<ハロウィンとカボチャの関係について~実はもともとは「カボチャ」ではなかった?!>

さて、ハロウィンといえば「カボチャ」を思い浮かべる人も多いことでしょう。

カボチャに目鼻と口を付けたお化けはハロウィンの代名詞ともいうものですが、彼にはきちんとした名前があります。聞いたことのある人も多い、「ジャック・オ・ランタン(ジャック・オーランタンとも)」です。ちなみに日本語に訳すとすれば、「ジャックのランタン(灯り)」となります。

このジャック・オ・ランタンにもいわれがあります。昔々、ウィルという男がいました。彼は口先だけがうまく、素行が悪い男でした。彼は卑怯な人間のまま死んだのですが、死後の行方を決める聖ペテロの前についたとき、お得意の口先で聖ペテロをだまします。その結果彼は見事に生き返るのですが、それでもその素行が改まることはありませんでした。

2度目の死のときには聖ペテロも決して騙されませんでした。そして聖ペテロは、この卑怯な男に、「お前のような男は、天国はもちろん地獄に行くことも許されない」と言い渡します。行き場を失ったウィルはたった1人で、延々と暗闇の中をさまよい続けることになりました。

しかし悪魔のなかにも慈悲を持つ者はいるようで、地獄で燃える石炭を1つウィルに渡します。ウィルの受け取ったその灯りは、非常に弱いものでしたが、時折人間の生きる世界にゆらめくようになりました。卑怯者ではあったものの、同時にひどく哀れな男であったウィルの受け取ったこの火を見て、人々は、「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」と称しました。

そしてこの小さな灯りに、メジャーな男性名である「ジャック」を冠して、「ジャック・オ・ランタン」と呼ぶようになったのです。

なお、もともとケルトのお祭りでも魔除けとしてカブを飾る儀式がありました。しかしアメリカではカボチャの方がよりメジャーな食べ物でした。また、上記の「ジャック・オ・ランタン」の伝承に従ってランタンを作るとき、カブよりもカボチャの方が加工がしやすかったなどの理由もあって、「カブ」ではなく「カボチャ」がハロウィンに用いられるようになったのです。

古代ケルトで誕生したハロウィンの原型は、キリスト教の影響を受け、アメリカの影響を受けて今のようなかたちになりました。ひょっとしたら1000年後のハロウィンは、また今とはまったく違うかたちになっているかもしれませんね。

<ハロウィンとお盆の共通点>

さて、この「ハロウィン」は実は「お盆」とも共通点の多いものでもあります。

もっとも大きな共通点は、「あの世から来た霊をお出迎えする」という点でしょう。ハロウィンではカボチャを、お盆ではナスやキュウリをシンボルとしますが、これも「野菜を使う」といった点で共通しています。そのため、しばしば、「ハロウィンは西洋のお盆」といわれます。家族が集まって食事をとったり、お墓参りに行ったりする点も共通しています。

ただ、ハロウィンとお盆では性質が異なります。

ハロウィンの場合は「悪霊を追い払うためのもの」という性質を持っていますが、お盆の場合は「やってくるのはご先祖様の霊だけである」と考えます。このためお盆では、ハロウィンのような悪霊払いのイベントは行われません。

ハロウィンではジャック・オ・ランタンのかたちで火を灯し、お盆では提灯に火を灯すという点は共通しています。しかしお盆の場合は「ご先祖様が迷わずに帰ってきてくださるように」との願いを込めて火を灯します。

また、ハロウィンの場合は「1年の終わり」「収穫祭」の性質も持ちますが、お盆の場合はこのような性質を持ちません。ハロウィンでは「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」と家々を回るという風習がありましたが、お盆の時期にはこれも見られません。

もっとも、はるかに遠いところで、「ハロウィン」と「お盆」という似た性質を持つ文化が誕生したことは、なかなか興味深い話ではあります。「ご先祖様に戻ってきてもらいたい」という気持ちは、古今東西、変わることのないものなのかもしれませんね。