地域によって異なりますが、7月の中旬あるいは8月の中旬からお盆の時期に入ります(現在は8月中旬からお盆になる、というところの方が多いといえます)。
お盆の時期にはどのようなことを行えばよいのでしょうか。
それを6つの観点から見ていきましょう。
紹介するのは、
1.迎え火(送り火)をたく
2.精霊棚を作る
3.仏壇を掃除する
4.お墓参りを行う
5.法要を行う
6.精霊流しなどに参加する
の6つです。
なおここでは数字をふっていますが、これはわかりやすくするためのもので、優劣や優先順位を示すものではありません。
<1.迎え火(送り火)をたく>
迎え火とは、ご先祖様が帰ってくる際に道に迷われないためにたく火のことをいいます。
ご先祖様が帰ってくるときの目印となるもので、多くの場合、8月13日の夕方あたりから行われます。家の中だけで迎え火をたくこともありますが、玄関先でもたくこともあります。
迎え火は、「おがら」と呼ばれている麻の茎を使って行います。これを、素焼きにした平皿(現在では耐熱性の器でもよいとされている)に折ってのせて、新聞紙などを皿とおがらの間にはさみこみ、火をつけます。こうすることで迎え火をたくことができます。なお、火を使う以上、火災が起きる危険性もゼロではありませんので、安全に配慮しながら行うようにしてください。
なお、お盆が明ける8月16日には「送り火」をたきます。これは、迎え火とは逆の意味を持つもので、ご先祖様をお送りするために行うものです。ちなみに非常に有名な京都の「大文字焼」も、この送り火の概念に基づいたものです。
現在では、「おがらによる迎え火・送り火をたくのは難しい」というご家庭もあるでしょう。
そのような場合は提灯を使っても構いません。「盆提灯」は昔からお盆の風物詩ともされているもので、これにも「ご先祖様が迷わずに家に帰ってこられるように」という願いが込められています。自分の家の名前が入ったものを作ることもできます。
<2.精霊棚を作る>
精霊棚とは、お供え物を備えるための棚をいいます。「盆棚」と呼ばれることもありますが、ここでは「精霊棚」の表記に統一します。
精霊棚は、一般的に、まこも(真菰。イネ科の多年草で、しめ縄などにも使われる植物)や笹竹を使って作られます。ただ現在では、自宅で一から精霊棚を手作りすることは難しいと思われるので、ネット通販などを介して手に入れてもまったく問題はありません。
お盆の期間中は、特に意識して精霊棚にお供え物をささげるようにするとよいでしょう。なお宗派によっては精霊棚を利用しないところもあります。
精霊棚に置かれるものの代表例として、「精霊馬」「精霊牛」があります。
精霊馬はきゅうりで作った馬であり、精霊牛はなすびで作った牛です。
「ご先祖様がいらっしゃるときは馬で速く着て、帰られるときは牛でのんびりと」という意味が込められています。
<3.仏壇を掃除する>
お盆はご先祖様をお迎えするための日であると同時に、生きている人間がご先祖様や信仰と向き合うタイミングでもあります。
そのため、仏壇をきれいに掃除して向き合う必要があります。ちなみに仏壇や仏具をお手入れすることは、徳を積むことに繋がるとされています。特に浄土真宗ではこれに重きを置いています。
汚れが非常にひどい場合や、使い始めて長い仏壇の場合は、専門業者にクリーニングを依頼してリフレッシュさせてもよいでしょう。ただそれほどでもない場合は、上記で挙げた「ご先祖様や信仰と向き合う」という意味からも、ご家庭でお手入れすることをおすすめします。
仏壇に使われている素材は、多岐にわたります。
木でできているのか、金属でできているのか、それともプラスチックでできているかによってお手入れの方法は異なってきます。仏壇を購入したお店がわかるのであれば、そのお店にお手入れの方法を問い合わせるとよいでしょう。
<4.お墓参りを行う>
お盆は、お墓参りをする絶好の機会です。「普段はお墓参りを行わない」という人であっても、お盆とお彼岸の時期はお墓参りをしている人も多いのではないでしょうか。お盆の時期に帰省してくる子どもたちと一緒に、先祖代々のお墓に足を運ぶというご家庭も多く見られます。実際、どこの霊園でも「1年で一番[大塚1] 混みあうのはお盆の時期」と答えています。
お墓にお参りするだけでもご先祖様とご挨拶ができますが、せっかくなので、お墓のお手入れ(掃除)も行うとよいでしょう。草をむしり、墓石を磨き上げ、花立などもきれいに掃除します。バケツや布を持っていき、丁寧にお墓を掃除しましょう。なお、お墓の掃除に洗剤を使う場合は、その洗剤が墓石を痛める危険性がないかをしっかりと確認しておく必要があります。
お墓を掃除した後は、新しいお花や線香を備えます。
食べ物をお供えしても構いませんが、食べ物はそのままにせず、お参りが終わって帰るときには持って帰りましょう。
現在は衛生上の問題から、「食べ物をそのままにしておいてはいけない」と定めている霊園が基本だからです。
<5.法要を行う>
「その人が亡くなってから初めて迎えるお盆」は、新盆あるいは初盆と呼ばれ(ここでは「新盆」に統一)、手厚く法要を行うのが一般的です。新盆では、親族が喪家に集まることになります。
新盆の場合はご僧侶を呼んで読経をあげてもらいます。その後で集まった親族全員で食事を行い、故人をしのんで思い出話を行います。なお新盆の法要の場合は葬儀に準じた服装(喪服)で参列するのが基本であり、かなり大規模なものとなることを覚えておくようにしましょう。また喪家は、新盆を行うために、ご僧侶のスケジュールを確保したり、会場の手配をしたりしたのちに、参加者に案内を出さなければなりません。
ここまでしっかりとやる法要は、ほぼ新盆に限られています。ただそれ以降であっても、宗教への帰属意識が高いご家庭などでは、「毎年お盆の法要を行う」としているところもあります。
このあたりはご家族の考え方次第なので、絶対的な「正解」があるものではありません。
<6. 精霊流しなどに参加する>
地域によっては、「精霊流し」などのような催し物をお盆のシーズンに行うところもあります。上で述べた京都の大文字焼も、お盆に行われる催し物のうちのひとつだと考えることもできるでしょう。なお精霊流しとは、故人を弔うために小さな船などを用意して皮に流すことをいいます。非常に美しく幻想的でどこか物悲しさをまとうこの光景は、多くの人をひきつけてやみません。このような「お盆の催し物」に参加するのも良いでしょう。
ただ現在は、新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延の影響と、環境保全の観点から精霊流しに対して慎重な姿勢をみせる自治体も増えています。特に、「精霊流しのために出かける」という場合は、目的地で本当に精霊流しが行われるのか、行われるとしたら何時からでどのような決まりがあるのかを事前に確認してから出発することをおすすめします。
またここでは「精霊流し」を例にとりましたが、お寺が行うお盆の催し物なども例年と異なる形態をとる可能性がありますから、必ず事前に下調べを行いましょう。
※この記事の情報は、2021年7月末日現在のものです。
1年のなかでも特別な意味を持つ「お盆」、やるべきことを把握してしっかり向き合いたいものですね。