〔あおき葬祭コラム〕第27回:おせちの由来とそれぞれの料理・食材のいわれ

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

お正月といえば、何はなくともおせち料理である――――という人は多いのではないでしょうか。

現在はお正月のかたちも多様化していっていますが、それでも、おせち料理はお正月の代名詞であり続けます。老若男女、多くの人が一度は口にしたことのあるものでしょうし、家族の中心にあり続けるものでもあります。現在は1人用のおせち料理や洋風・中華・お菓子のおせち料理なども出てきていますが、それでも、人々がおせち料理に込めた思いは変わることはありません。

おせち料理には、数多くのいわれがあります。

ここではそんなおせち料理の歴史やいわれについて取り上げていきます。

<おせち料理の歴史はいつから始まる?>

おせち料理はいつから始まったのか? という単純な問いへの答えは、まだはっきりとはわかっていません。「正月」の起源自体がはっきりとはしていないからです。ただ「正月に関しては、まだ仏教が日本に伝わってくる前の6世紀ごろにできた概念ではないか」「秦の始皇帝が生まれたとされる月(政月・セイグヮツ)が『正月(シャウグヮツ)』となって、正月になったのではないか」などの説があります。

おせち料理の起源ははっきりとはわかっていないものの、現在よくとられている説は、「中国から伝わってきた文化によるものではないか」というものです。中国では、季節の節目を「節」とし、お祝いをしていました。この中国の文化が日本に伝わると、日本でも宮中において、「節会(せちえ)」が開かれることになりました。この「節会」とは、節をお祝いする行事・宴のことです。このときに出された料理である「節供(せちく)」が、現在の「おせち料理」になったのではないかとされているのです。この説を採用するとすれば、おせち料理は、1300年近い歴史を持つものだといえますね。

かつては宮中の文化であったおせち料理は、ほかのさまざまな行事がそうであるように、時間を経るに従い、一般市民にも浸透していきました。おせち料理が急速に広まったのは江戸時代だといわれています。町民文化が花開いた江戸時代においては、「縁起物」が非常に好まれました。「初カツオ」などがその代表例ですが、おめでたい縁起物であるおせち料理は、語呂合わせを楽しむ町人たちの好みとも合致し、広く知れ渡っていくようになります。現在でも「桃の節句」「子どもの日」「七夕」として多くの人に愛されている節句とともに、おせち料理もまた、多くの人に愛されていくようになりました。

また、かつてはおせちは、「大晦日の日に、歳徳神(としとくじん。その1年の福を司る神)に備え、一緒に食べる料理である」とする説もあります。現在もこの考えの元、おせち料理を大晦日に食べる家庭もあります。

ちなみに、おせち料理を食べるときに使う「祝箸」は、真ん中が太くなっていて両端が細くなっています。これは、「細くなった片方で人間が料理を口に運び、もう片方は神様がお使いになる」とするいわれからだとされています。

<おせち料理の食材のいわれを知ろう>

おせちは、それ自体にもいわれがあるものですが、おせち料理の定番として入れられている料理・食材にもさまざまないわれがあります。「しゃれ」「語呂合わせ」ともいわれていますが、なかなか面白いものなので、ここではその代表的なものをいくつか紹介しましょう。

栗きんとん……おせち料理のなかでも、非常に人気の高い料理です。栗きんとんのきんとんは「金団」と書きます。この縁起の良い漢字を使うこと、また色が黄金のように美しい金色(黄色)であることから、「小判」「お宝」をイメージさせるものとしておせち料理に入れられるようになりました。ちなみにこの黄色をきれいに出したい場合は、ミョウバンとクチナシを使うとよいでしょう。

黒豆……「まめまめしく働く」という意味を持っています。また、「まめに、丁寧に日々の生活を営む」という意味を持っています。かつては、働けること=生活を成り立たせていくことであり、丈夫に働けることが非常に重要でした。そのため、黒豆がおせち料理に入れられていました。丹波の黒豆が有名です。なお、黒豆はきちんと作ろうとすると3日ほどかかるので、用意はお早目に。上に金箔をふると美しくみえます。

伊達巻き……伊達巻きは、ダシ巻き卵とも卵焼きとも異なる料理です。魚やエビのすり身を入れて、砂糖を多く加えて焼き上げる料理です。お菓子のような味わいをとるのが基本で、これはかつて、出島のあった長崎から江戸に伝わった料理だとされています。ハイカラな料理の代表である「カステラかまぼこ」が、洒落者(伊達者)の服に似ていたことから、この名前が付けられていました。

また、おせち料理の一つに「奉書巻き(薄く切った大根でカニなどを巻く料理)」があります。これは、「大切な絵などは奉書のかたち(巻物のかたち)で保管していた」というところからきています。伊達巻きもまた「巻物」であるため縁起が良い……とする説もあります。

紅白かまぼこ……これは非常によく知られているものです。「紅白」はめでたい色であるとされているため、これを利用したかまぼこが使われました。紅白かまぼこだけでなく、紅白卵(食紅で赤く染めた卵と、白い卵を入れる)を用いる家もあります。

またかまぼこの半円は、「日の出」を連想させるということで、お節料理に広く入れられています。

カズノコ……数の子は、子孫繁栄を祈るために入れられるものです。また、子宝に恵まれることを願って入れられます。カズノコはニシン(二親)からとられるものであり、たくさんの子を持つため、おせち料理に入れられるようになりました。

田作り……「田んぼが作れるように」という名前を持つ田作りですが、かつて小さな魚は畑の肥料としても使われてきました。また昔は「尾頭付きの魚」が非常に重宝されていましたが、田作りは小さくても尾頭がついているので縁起が良いと考えられています。

れんこん……仏教の考え方では、「仏様がおわす極楽浄土には蓮の花が咲いている」とされています。また汚泥の中にあっても美しい花を咲かせる蓮の花は、仏教において特別な意味を持っています。このため、蓮の花は仏教の不祝儀袋などにも印刷されています。その根っこであるれんこん(蓮根)がおせち料理に入れられるのは、当然のことだといえるでしょう。

またれんこんは穴が開いているため、「先を見通せるように」という願いが込められているとも言われています。

煮物(七宝煮)……ゴボウや鶏肉など、さまざまな食材を一緒に煮る煮物は、「(それぞれ異なる)家族がずっと仲良くいられますように」という願いを込めて作られています。

エビ……さまざまな料理で使われる「エビ」は、長生きを願って入れられます。エビのように腰が曲がるまで、エビのように長いヒゲができるまで長生きできますように……という願いが込められています。エビは汎用性の高い食材であり、さまざまな料理に使うことができるのも魅力です。

このように、おせち料理と、そこに入れられる料理・食材にはさまざまないわれがあります。たとえおせち料理の文化が様変わりしていき多様化していったとしても、そこに込められた多くの意味や願いは、今後も失われることはありません。このような視点でおせち料理を見てみるのも良いものですね。