仏教を信じる人にとって、「お仏壇」はもっとも身近な仏具だといえます。
今回はこの「お仏壇」を取り上げ、「現在のお仏壇のかたち」と「毎日のお参り」について解説していきます。
<現在はお仏壇のかたちも多種多様! どれを選ぶかは人それぞれです>
葬儀のかたちが多様化していく過程で、お仏壇のかたちも多様化していきました。よりその人らしいお仏壇を選ぼうとする考え方は広く浸透していき、現在ではさまざまなスタイルのお仏壇が取り扱われるようになりました。
お仏壇は本来は仏教徒のための道具ではありますが、「無宗教だけれど、手を合わせる先としてお仏壇を置く」という人も珍しくありません。
お仏壇の種類は、デザインで分けると以下の3つに大別されます。
【金仏壇(きんぶつだん)】
伝統的なお仏壇のかたちのうちのひとつであり、金粉や金箔を使って作り上げる仏壇を言います。スギの木などを黒の漆塗りで仕立て、中を金色にするのです。この「金色」「威厳のあるたたずまい」は、極楽浄土を表しているといわれています。
また、積極的に蒔絵や彫刻などの細工を施すのも、この金仏壇の特徴です。
漆を使っているため「もち」も良く、長く使い続けていくことができるのもメリットです。
3つのお仏壇のなかでもっとも豪奢なイメージを持つものであり、インパクトはとても大きいといえます。文字通り、その輝く美しさはほかのものと比べることができないものです。天上の美しさと世界観を描き出すもので、芸術品としての価値も持ちます。
ただその分、金仏壇は値段が高額になる傾向にあります。商品にもよりますが、唐木仏壇の倍程度の出費を覚悟しておいた方がよいものであり、100万円を超えるものもあります。また、こだわるのであれば1000万円を超えるものを求めることもできます。
【唐木仏壇(からきぶつだん)】
唐木仏壇もまた、金仏壇と同じく「伝統的なお仏壇」に分類されるものです。紫壇や黒壇といった有名で丈夫で美しい木を使って作って作られるもので、基本的にはライトブラウン~ブラックの色合いをとります。
金仏壇とは異なり、木目の美しさを重要視するお仏壇であり、金仏壇に比べて落ち着いたたたずまいとなります。シックな印象を抱かせる仏壇であり、家のインテリアとも比較的なじみやすいといえます。このようなことから、「唐木仏壇だが、モダン仏壇(後述します)としても使える」としているものもあります。
金仏壇に比べて価格は抑えめであり、10万円程度がボリュームゾーンだといえます。しかし唐木仏壇は値段に非常に幅があります。「金仏壇に比べて価格は抑えめである」としましたが、唐木仏壇のなかには100万円を超えるものもあります。このため、唐木仏壇を選ぶ場合は、「どれくらいの価格帯のものにするか」「どのような木材を使ったものにするか」などをしっかりと決めておく必要があります。
【モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇】
モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇は非常に新しい仏壇のかたちであるため、呼び方は統一されていません。ここでは、比較的よくみられる3つの呼称を並列で取り上げることとします。
モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇は、ほかの仏壇とは一線を画すものです。「毎日の生活のなかに、自然に仏壇が存在すること」「インテリアになじむこと」「調度品のように溶け込むこと」を目的として作られたものであり、非常にファッショナブルで、デザイン性に優れています。一見しただけではお仏壇であることがわからないものもあり、タンスや鏡台のように見えるものもあります。
また、壁掛けの絵画や鏡のように見えるものもあり、言われてもお仏壇であることがわからないものさえもあります。
小さなミニ仏壇も積極的に作られていますし、薄型の仏壇なども数多く用意されています。そうかと思えば、一般的な仏壇のようにお参りができるものもあります。椅子とセットになったものなどもあり、そのすべてを説明するのは不可能でしょう。
モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇は非常に多岐に富んでおり、「個人・あるいは故人の好み」が最大限に反映されるかたちをとります。
ただ、傾向としては、「柔らかみのある色で、圧迫感がなく、自然に部屋になじむもの」が比較的多いといえます。
「故人のことは弔っていきたいけれど、部屋のスペースに限界がある」
「故人を故人としてとらえず、一緒に生活するような感覚でいたい」
と考える人に向いています。
なお、仏壇の大きさの分け方として「ミニ仏壇」などがあります。これは文字通り小さな仏壇です。金仏壇や唐木仏壇でもみられますが、そしてあくまで体感的なものではありますが、モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇の場合はこのミニ仏壇の種類も比較的多いように感じられます。
金仏壇ならば重厚な雰囲気と美しさが、唐木仏壇ならばシックで優美なデザインが、モダン仏壇・インテリア仏壇・家具調仏壇ならばご自身や故人の好みにあったかたちが選びやすくなるという特徴はあります。
しかし仏壇のかたちに、良い・悪いはありません。自分たちや故人にとってベストのかたちはどれなのかを考えて選んでいくとよいでしょう。
<毎日のお仏壇へのお参りの仕方について>
さて、ここからは「毎日のお仏壇へのお参りの仕方」について解説していきます。
基本的には毎朝行うものです。
1.お仏壇の前で一礼と合唱をして、お仏壇の扉を開ける
2.軽くほこりなどを払う
3.水や仏飯などを供える(宗派によって微妙にやり方が異なる)
4.ロウソクと線香をあげる
5.手を合わせて合掌をする
6.お鈴を鳴らし、お経をあげる
7.再度お鈴を鳴らし、合掌する
8.ロウソクの火を消す
9.朝食が終わったら、仏飯などを下げる
10.内側の扉を閉める
なお、眠る前のお参りとしては、この手順の4から8を繰り返します。その後に仏壇の扉を閉めます。また、日中のお参りでお供えをしている場合は、夜にそれを下げることもお忘れなく。
基本的には、ロウソクは「そのときのお参りが終わったら、消してしまって構わないもの」です。また家に常にだれかがいるのであれば、失火の危険性も低いといえるでしょう。
ただ、人間にはミスもあるものです。仏壇から出た火が原因で火事になる可能性も否定しきれません。特にご年配の方の一人暮らしの場合、心配は大きいといえるでしょう。
そのため現在では、電気式のロウソクを導入するお宅も増えています。これを使うのもひとつの方法です。
お供えは、毎日
・お香
・花
・ろうそく
・水やお茶
・ご飯
を供えるのが基本です。なお花は1日で枯れるものではありませんから、まだ元気なようならば水を取り替えるだけで構いません。
ご飯は、下げた後は家族で食べるのが理想的だとされています。ただ「ご飯が硬くなっている」「衛生的に不安がある」と感じる場合は、処分してしまっても構いません。
また現在は、「故人の好きだったものをお供えする」という考え方が主流になりつつあります。このため、お供えするものを「ご飯」に限る必要はなく、パンなどを選んでも構わないとされています。
「その日、家族が食べる朝ごはんと同じものを」としているご家庭もあります。
お仏壇へのお参りは、何よりも「心」を示すためのものです。
やり方や手順はありますが、四角四面に守る必要はありません。故人と向き合う時間や思いこそを大切にしてください。