〔あおき葬祭コラム〕第95回:改めて学ぼう「お盆」の意味

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

日本で暮らす人であるならば、「お盆」という言葉は耳にしたことがあるはずです。ただ、この「お盆」がどのような歴史と意味を持っているかについてはあまり知らない人もいるのではないでしょうか。

ここでは、私たちにとってなじみ深い「お盆」を取り上げ、

・その起源の意味

・お盆の時期

・新盆

について解説していきます。

<「お盆」の考え方は、仏教から来ている>

現在では「夏季休暇」のような意味で使われ、宗教的な儀式と結び付けられずに語られることも多い「お盆」という言葉ですが、この言葉はもともとはインド生まれの仏教から来ています。

お盆は、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」あるいは「盂蘭盆(うらぼん)」ともいわれます。この言葉は、お経のひとつである「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」からきています。なお「盂蘭盆経」という漢字が与えられていますが、これはサンスクリット語である「ウラバンナ(逆さに吊るされた苦しみ)」あるいは「ウラヴァン(魂)」から来ています。

お釈迦様(ゴーダマ・シッダールタ)は数多くの弟子を取りましたが、そのなかに、「目蓮(もくれん)」という人物がいました。目蓮の母親は死後に地獄で逆さに吊るされて拷問を受けていたそうです。それを知った目蓮はお釈迦様に助けを求めました。

するとお釈迦様は、「7月中旬に徳高き僧と一緒に祈りを捧げれば、母上は救われよう」と目蓮に告げました。目蓮はそれを実行、すると母は救われて旅立つことができたとされています。

このエピソードと言葉が、現在のお盆の起源だとされています。

なお、日本では606年に推古天皇によってお盆の儀式が行われたと記録されています。ただ、お盆の文化は、かつては上流階級だけのものでした。貴族や武士など一部の特権階級でのみ行われる風習であり、これが庶民のものとなるには、江戸時代の訪れを待たなければなりません。町民文化が花開いた江戸時代にはお盆が庶民にも受け入れられるようになり、やがてそれが広まっていったとされています。

<実は地域によって異なるお盆の時期と、行うべきこと>

お盆の時期についてみていきましょう。

実はお盆の時期は地域によって異なります。たとえば、東京などの一部では7月にお盆を迎えます。7月のお盆は新暦の考えに基づいたものですが、これは新暦を普及させたかった当時の明治政府の影響を東京が受けたからだともいわれています。逆に、8月がお盆だとされる地域は、「明治政府の目が届かなかったから」「7月は農作業の時期であり、この時期に休んでしまうと後が大変だから」などの理由があったと推察されています。

また、沖縄では9月にお盆を迎えることもあります。

ただ現在は、どこも8月にお盆を迎えるところが多くなっているように見受けられます。これは、ひょっとしたら「子どもの夏休みと、大人の夏休みを合わせよう」とする考え方が基になっているからかもしれません。

もっとも、7月のお盆であっても8月のお盆であっても9月のお盆であっても、行うことはあまり変わりません。

お盆のときに行うべきことは、

1.お墓と仏壇の手入れ

2、ご先祖様をお迎えする儀式

3.お参り

の3つです。

それぞれみていきましょう。

1.お墓と仏壇の手入れ

お盆の時期に行うべきことの筆頭として、「お墓と仏壇の手入れ」が挙げられます。ご先祖様と向き合うための大切な儀式であるため、心を込めて行いましょう。

現在のお墓や仏壇は、基本的には

①ほこりを払い落し

②固く絞った布巾で拭き上げ

③乾いた布巾で拭き上げ

④花立などの付属品をきれいにする

の工程をとるだけできれいになります。なお、洗剤は合う・合わないがありますから、基本的には使用を避けるべきです。どうしても使いたい場合は、お墓・仏壇の業者に聞いて、どんな洗剤を使えばいいかを確かめましょう。

また、この時期にお墓の修繕やクリーニングを専門業者に頼む人もいます。

お墓は長い間屋外にありつづけることを前提として作られている非常に頑丈なものではありますが、それでも、経年劣化は避けられません。彫り込んだ文字が見えにくくなることもあるでしょう。

このため、お盆の時期に合わせてお墓の欠けを直したり、コケなどを落とすために専門の業者に依頼したりすることもあります。

2、ご先祖様をお迎えする儀式

お盆の時期にはご先祖様が帰ってくるといわれています。そのため、ご先祖様が迷わずに帰ってくることができるようにと、お迎えの儀式が行われることもあります。

その代表的なものが、「迎え火」です。植物の茎を燃やして火を焚き、ご先祖様の目印にしてもらうのです。また、盆提灯を飾ることもあります。

「精霊馬」もまた、ご先祖様をお迎えするうえで重要なものです。これはキュウリに足を4本生やして馬を模したもので、「ご先祖様が馬に乗って早く戻ってこられるように」という願いを込めて作るものです。

ちなみに、「お迎えの儀式」と対になるものとして、「お送りの儀式」もあります。

迎え火の対になるものとして「送り火」があり、これはお墓の前などで火を燃やすものです。なお、観光客にも人気の京都五山の夏の送り火もまた、この「お盆の送り火」と同じ性質を持っています。

馬に乗ってやってきたご先祖様を送り出す場合は、ナスで作った牛が使われます。これは、「来るときは馬に乗って早く、帰るときは牛に乗ってゆっくりと」という思いが込められているものです。

3.お参り

お盆の時期には、多くの人がお墓にお参りに行くでしょう。新盆(後述します)以外の場合は、「親族みんなで集まって、お墓にお参りに行って手を合わせて解散」というケースが多いかと思われます。

ただ、信心深いご家庭の場合は、毎年お盆の時期に家でお経をあげてもらうこともあります。また、お寺が行っている盂蘭盆会の法要に参加するのもひとつの方法です。

<新盆って何のこと? お盆のなかでも特別なものです>

宗教への帰属意識がそれほど高くないご家庭の場合は、「お盆の時期はお墓や仏壇を掃除して、みんなで集まって終わり」というケースが多いかと思われます。

ただ、新盆に関しては様子が異なります。

「新盆(にいぼん)」は、「初盆(初盆)」とも呼ばれます。ご家族のだれかが亡くなってから初めて迎えるお盆のことであり、特別な意味を持つものです。

新盆のときはご自宅にご僧侶様を招いてお経をあげてもらう「法要」の形態をとることが多いといえます。その後には会食の席が設けられることも多いものですし、服装も礼服や喪服をまとうことになります。

またこの新盆の法要に合わせて、納骨の儀式を行うことも多いといえます。新盆の場合は宗教的儀式や会食も伴うため、1か月以上前に招待状を出しましょう。この時期はご僧侶様も忙しいので、ご僧侶様のスケジュールを確認しておくことも重要です。

なお、「お盆はご家族のだれかが亡くなってから初めて迎えるお盆」としましたが、亡くなって四十九日以内の場合は新盆は翌年となります。

例:

逝去日が2022年7月14日

四十九日にあたるのは2022年9月1日

→この場合は、新盆は2023年の7月あるいは8月となる

お盆は、ご先祖様と向き合い、ご先祖様をお迎えし、今ともに生きている人たちと語り合う大切な機会です。時代が変わろうとも、その姿勢や目的に変わりはありません。

今年も丁寧に迎えたいものですね。