仏教における「法事(法要)」は、故人の追悼供養のために行うものです。また、大切な家族を失った人同士で集まり、故人を悼み、思い出話を共有するためにあるものでもあります。
今回はこの「法事(法要)」と「日時」を組み合わせて、「法事(法要)を行う日時の決め方」について解説していきます。
※「法事」とは、宗教的な儀式である「法要」と、それに付随する食事などを含めた一連の行動を指す言葉です。ただ新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり、現在では「法要は行うが、食事は行わない」というケースもあります。このためここでは「法事(法要)」として表記して解説していきます。
<まずは知っておきたい法事(法要)の基本>
仏教で法事(法要)には、
1.初七日法要
2.四十九日法要
3.一周忌法要
4.三回忌法要
5.七回忌法要
6.十三回忌法要
などが挙げられます。ただし現在は初七日法要は、火葬が終わったその日(葬儀の日)に「繰り上げ初七日法要」としてまとめて行うかたちが一般的です。また初七日法要と四十九日法要の間では、七日ごとに、「二七日法要」「三七日法要」「四七日法要」「五七日法要」「六七日法要」が行われるのが正式ですが、現在はこれらは省略されるのが基本です。
年回忌法要は、どこかのタイミングで「弔い上げ」を行います。これは、「定期的に行う法事(法要)はここまでにして、それ以降は法事(法要)をしません」とするものです。三十三回忌のタイミングや五十回忌のタイミングで行うことが多いのですが、現在は十三回忌で弔い上げとするケースも増えています。
なおここでは「法事(法要)」としていますが、亡くなってから時間が経つにしたがって、「ご僧侶は呼ばずに、自分たちだけで集まって故人を弔う」というやり方をとる人が増えていきます。
<法事(法要)の日時の決め方について~「日にちのズレ」は許されるか?>
上記で紹介したタイミングを厳粛に守って法事(法要)を行おうとする場合、平日に法事(法要)を行わなければならないことになります。しかしこれは、非常に難しいといえるでしょう。
もちろん例外はあるものの、多くの人は土日が休みで平日は仕事であるからです。法事(法要)は遠方で行われることも多いため、平日に法事(法要)を行おうとすると、ウィークデイに連休を取らなければならなくなってしまうこともよくあります。特に四十九日法要の場合、「2か月ほど前に、通夜や葬儀で休みを取ったのに、また休みを取らなければならない」ということになりかねません。
このため、現在では亡くなった日から厳密に計算するのではなく、少しずらして土日に合わせて法事(法要)を行う形式が一般的になりつつあります。このようにすることで、参列できる人の数も増やせるからです。
ただ、法事(法要)は前倒しにすることはあっても、後ろ倒しにすることは望ましくないとされています。また、ずらしてもいい期間はおおよそ1か月程度が目安とされています。つまり3月15日に亡くなった場合、2月15日~3月14日の間の土日で行う……というやり方が望ましいといえるのです。
<法事(法要)の日付を決定するための優先順位>
上記を踏まえたうえで、「それでは何を優先して法事(法要)の日付を決めていけばいいか」を解説していきます。優先順位をつけて述べましたが、数字が小さいほど優先順位が高く、数字が大きいほど優先順位が低いと考えてください。
1.ご家族の都合
2.ご僧侶さまの都合(※読経などの宗教的を伴う場合)
3.参列者の都合
4.石材店の都合(※納骨を行う場合)
5.会場の都合
6.食事場所の都合
ひとつずつ見ていきましょう。
1.ご家族の都合……
もっとも大切なのは、ご家族の都合です。喪家のメンバーが全員集まれる日を設定するのが鉄則です。特にご家族が遠方に散っている場合は、このスケジュール調整が重要になってきます。
2.ご僧侶さまの都合(※読経などの宗教的を伴う場合)……
読経などの宗教的な儀式を必要とする法事(法要)の場合は、ご僧侶さまの都合も考えなければなりません。「〇月×日が父の命日なので、そのあたりで三回忌法要を行いたいと考えています。ご都合はどうでしょうか」などのように打診してみるとよいでしょう。
なおこの打診は、通夜や葬儀を頼んだ菩提寺に行うのが基本です。ただ「葬儀のときの対応があまりにも悪かった」「宗教への帰属意識が極めて薄い」「遺言で、法事(法要)のときにご僧侶さまを呼ぶことはせず、家族だけで偲んでくれと言われている」「もう亡くなったのが随分前だ」という場合は、この工程を省いても問題は起こりにくいでしょう。
3.参列者の都合……
ご家族の都合ほどではありませんが、参列者の都合を考慮することも重要です。特に、故人と極めて親しかった間柄にある人がいるのならば、事前にその人にスケジュールを聞いておき、来ることのできる日を法事(法要)の日とする……といったやり方をとることをおすすめします。
ただ逆に、「親戚なので声を掛けるが、無理ならば無理で構わない」という関係性の人に対しては、事前に確認などは行わず、「この日に行いますので、出欠のご連絡をお願いします」というかたちで案内状を送付する方式で構わないでしょう。
4.石材店の都合(※納骨を行う場合)……
納骨を行う場合は、墓石の一部を動かして石室に骨壺を収めるという過程を経る必要があります。墓石は非常に重いため、動かすことには専門的な知識と道具が必要となります。そのため、石材店のスケジュールも確認しなければなりません。
ただ石材店は複数人のスタッフを抱えていることが多いので、「〇月×日に納骨を行うつもりですが、ご都合はいかがですか」と聞くかたちで問題ないでしょう。
また現在は、墓石の一部を自分たちで動かして納骨できるようになっているお墓もあります。この場合は無理に石材店に連絡する必要はありません。
5.会場の都合……
法事(法要)を行う会場の都合も考慮しましょう。お寺や自宅、法要会館やホテルなどがその候補です。ただ、「絶対にお寺で行いたい」などの強い希望がある場合以外は、「会場の都合」の優先順位は低いといえます。
なぜなら現在は法事(法要)を行うための会場の選択肢が複数あるからです。「お寺が空いていないなら法要会館にする」「ホテルの都合がつかなければ自宅で」などのように、自在に切り替えることが可能なのです。
6.食事場所の都合
食事を伴う法事をする場合は、食事場所の都合も確認しなければなりません。この場合は、「法事(法要)なので喪服となるが良いか」なども確認しておきましょう。
どうしても取れない場合は、仕出し弁当などを利用するのも良いものです。
なお、法事(法要)の日時を考えるときにしばしば話題に出される「六曜」ですが、これを気にする必要は一切ありません。六曜はただの暦の読み方を指すものであって、仏教とは直接的な関わりはないのです。そのため、大安の日や友引の日を選んでもまったく問題ありません。
ただ、周りの人でこれを気にする人がいたのならば、念のため日時をずらしてもよいでしょう。
「法事(法要)」は、故人を悼み、故人の死と向き合い、故人の思い出話を行うための大切な機会です。しかし厳密になりすぎる必要はありません。ご家族の事情を最優先として、「みんなで集まれる日」に行うとよいでしょう。