「終活」「葬儀」は、人生の終わりを強くイメージさせるものであると同時に、「人生の終盤期をどう生きるか?」を考えるうえでも非常に役立つものであるといえます。
今回はこの「人生の終盤期」と「アクティブシニア」という言葉をつなげて、その言葉の意味や生き方、考え方について解説していきます。
<アクティブシニアとは何を指す言葉?>
「アクティブシニア」とは、一言でいうのならば、「いつまでも元気で、活動的に動くシニアのこと」です。
これは総務省なども用いている言葉であり、近年注目を集めている言葉でもあります。
かつての「シニア」はそのまま「老人」という言葉とよく結び付けられていました。「老人」という言葉は、それ単体ではプラスの意味もマイナスの意味も持ちませんが、イメージ的には「体が衰えてきていて、認知能力も低下しており、学習能力も低い状態で、時に身の周りのことをすることにも人の手助けや介護を必要とする人」といったネガティブな印象が強い言葉だといえるでしょう。
しかし医療技術が発達し、健康に関する知識が広くいきわたった現在においては、かつて「老人」と呼ばれる世代であった人でも非常にアクティブに活動的に動くことができるようになりました。
元気で、自分のことは自分でできるだけでなく、場合によっては周りの人の手助けを行うことすらできて、経済的にも余裕があり、人生に前向きである……こういう生き方が、現在の「高齢者」はできるようになったのです。
現在の60歳と50年前の60歳は、大きくその様子が異なります。たとえば現在のデータにおいては、87歳~89歳の高齢者のなかでも生涯にわたって極めて高い自立度を維持している人が10パーセント程度(男性)もいます。70代に入ると、「ゆるやかに自活能力が低下していく人」の割合は女性では87.9パーセント、男性では70.1パーセントです。しかし、かつて「高齢者」のラインであった60歳で自分の面倒が見られなくなる人はほぼみられず、70歳前に「自立度が一気に低下する人」の割合は、男性でも19.0パーセント、女性にいたっては12.1パーセントにとどまっています。
このようなことからも、現在の「高齢者」がかつての同じ世代に比べて非常にアクティブであり、自活能力も高いことが分かります。
出典:総務省「第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか」内 総務省「「ICT超高齢社会構想会議報告書」(秋山弘子「長寿時代の科学と社会の構想」より)」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/html/nc123210.html
<アクティブシニアであり続けるために~日常生活において気を付けるべきこと>
ここからは「それではアクティブシニアであり続けるためにはどうすればよいか」を、「日常生活編」と「外部との関わり方」から見ていきましょう。
・よく眠る
「睡眠」は、人間にとってもっとも基本的な行動のうちのひとつであると同時に、もっとも手軽なストレス解消方法のうちのひとつでもあります。また人は寝ているときに体の疲れやけがや病気を回復させます。そのため、「眠ること」は非常に重要なのです。
年齢が上がってくると、とても早い時間に目が覚めてしまいがちになります。ただその場合でも、睡眠の質が良ければある程度フォローはできます。眠る2時間前にはスマートフォンなどから目を離し、湯船にきちんと使い、適温で静かな寝室で眠るようにしてください。
・食事の管理もしっかりと
人は栄養をとらなければ生きていけません。高齢になると歯や喉の問題で食事がしにくくなることもありますが、健康なうちは意識して「きちんとした食事」をとりましょう。アルコールは適量で押さえ、カロリーの高すぎる者は避けて、好き嫌いはやめ、バランスよく食事をとります。
栄養バランスと出費のバランスを考えれば自炊がおすすめですが、難しいようならば宅配サービスなどを利用しましょう。現在はご高齢の方向けや生活習慣病の方向けの宅配サービスも利用できるようになっています。
・お金の管理は重要である
お金があればすべての悩みが解決できるとはいえませんが、お金で解決できる悩みはたくさんあります。しかし年金や貯金は、当然ではありますが、「使えばなくなるもの」です。
そのため早い段階で、「自分の生活に最低限必要なお金はいくらくらいなのか」「貯金はするのかしないのか」「趣味に使うお金はどれくらいにするか」を考えておきましょう。
なお高齢者施設への入居を考えているのであれば、そのためのお金も確保しておきましょう。
・適度な運動を行う
どれほど健康的で活動的な人であっても、人間は年をとれば必ず筋力は衰えていきます。これに例外はありません。そうであるからこそ、アクティブシニアでありたいと願うのであれば、「適度な運動」が必要です。
この「適度な運動」はその人の筋力量や体の状態によって異なります。実際、70歳を超えた人であっても、柔道などの激しいスポーツをしている人もいます。ただ自信がないのであれば、まずはウォーキングなどの軽い運動から始めましょう。
運動は、筋力の維持と体重コントロールだけに関わるものではなく、ストレス解消や安眠といったメリットをもたらしてくれるものでもあります。
<「人との関わり」は非常に重要>
「性格によって認知症のなりやすさが異なる」とした統計では、「消極的な人はそうではない人に比べて認知症を患っている可能性が有意に高い」というデータが出ています。無口で、人と関わることをしていない人の場合は、認知症になるリスクが高いわけです。
そのため、高齢者世代は意識的に人と関わることが重要です。
・仕事をする
お金に余裕がある人でも、社会との関わりを増やすために仕事をしているご高齢の方は多くいます。「かつては現場によく出ていたが、今は資格を生かしてチェック業務などの事務作業をよく担当するようになった」という人も見られます。
現役世代のときほどハードに働く必要はありませんが、「人との関わり」のために仕事を続けるあるいは再就職するのもよいでしょう。
・趣味を持つ
無趣味な人は人生に飽きやすく、社会性に乏しくなりがちです。そのため、高齢であればあるほど趣味を持つことが重要になってきます。
昔やっていた趣味を再開してみるのも良いのですが、新しい趣味を始めてみるのもよいでしょう。実例では、「65歳を超えてスキューバーダイビングを始めた。新型コロナウイルス(COVID-19)前は3~4か月に一度は潜りに行っていた」という人もいます。
・こんな時代だからこそ、人と連絡を取り合う
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は非常に大きく、「人と気軽に会えない時機」は随分長く続きました。
新型コロナウイルス(COVID-19)がある程度落ち着いた今であっても、ご高齢であるがゆえに、人と直接会うのが難しい……という人もいるでしょう。
そのような場合は、お歳暮やお中元、誕生日などの折につけ、連絡をとったり、贈り物を交わし合ったりするのがよいでしょう。たとえ対面で話ができなくても、このような行動は、人の人生を充実させます。
どれほど健康な人であっても、年をとれば、必ず体力は落ちていきますし判断力も低下していきます。これは避けようがないことです。また、どれほど生活に気を付けていても、認知症などを患う人はいます。しかし日常の生活を丁寧に送り、人と積極的に関わり合うことで、アクティブシニア時代を長く続けられる可能性は高くなるといえるでしょう。
参考
アクティブシニア