〔あおき葬祭コラム〕第107回:恥をかきたくない! 香典(不祝儀)のマナーについて

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相互扶助の精神から生まれた「香典(不祝儀)」は、葬儀のときにお持ちするものです。

しかしこの不祝儀は、宗教などによって書かれるべき言葉が違うものです。

ここでは、「まさに、その時」に恥をかかなくて済むように、不祝儀の正しいマナーについて解説していきます。

※「香典(不祝儀)の金額」にまで言及してしまうと非常に長くなるため、ここでは「中身」ではなく、「香典(不祝儀)袋のマナー」について主に取り上げていきます。

<いろいろな書き方~表書き、名前の位置、内袋に何を書くべきか>

まずは「表書き、名前の位置、内袋に何を書くべきか」という「書き方のマナー」について解説していきます。

【表書き】

表書きは、宗教によって選べる言い回しが異なります。

仏教の場合は「御香奠」「御香典」「御霊前」「御香料」「お悔やみ」などの表記が使われます。また、「御仏前」「御佛前」とすることもありますが、これは一部の宗派のみの書き方です。一般的な仏教においては、亡くなった方は四十九日を過ぎてから仏様になると考えているため、葬儀のときでは「御仏前」ではなく、「御霊前」とするのです。しかし浄土真宗においては、「亡くなった方はすぐに仏様になる」と考えるため、「御霊前」ではなく「御仏前」を使います。

神道の場合は「御榊料」「御玉串料」「御霊前」「御神前」「神饌料」などの言い回しをします。榊や玉串は神道の葬儀において欠かすことのできないものであるため、これが表書きに使われるのです。なお、「神饌料」は「しんせんりょう」と読み、神様にお供えする物のことをいいます。

キリスト教の場合は、大きく「プロテスタント」と「カトリック」に分けられます。カトリックの場合は「御霊前」「御ミサ料」という言い回しが使えますが、カトリックの場合はこれは使えません。

2つに共通した表書きとして、「御花料」「献花料」などが挙げられます。キリスト教では花によく親しむため、これを用いた言い回しが取られるのです。

ここまで読み進めて行くと、私たちにとって一般的になっている「香典」という言い回しは、実は仏教の不祝儀のことだけを指すと分かります。しかし現在は「香典」という言葉が非常に浸透しているため、神式の場合でもキリスト教の場合でも「香典」とすることもあります(ここでは使い分けをしていきます))。

また、「御霊前という言葉は、一部の宗派(浄土真宗とカトリック)では使わないとしていますが、一般弔問客がこの表記で持って行ったとしても、それが問題になることはほとんどありません。

【名前の位置】

名前は、水引の下に入れます。同じ苗字の人がいることも考えられるので、フルネームで書くのが原則です。「結婚して姓が変わった。旧姓を書いておかないと、だれだか分らなくなってしまうかも……」という場合は、まずは中央に現在の名前を書いて、その横にカッコで旧姓を書き添えるようにしてください。

会社代表として足を運んだ場合も、個人のフルネームを記す必要があります。ただし、会社名や役職名も右側に記載するようにしてください。なお、香典(不祝儀)を渡すときに、名刺を一緒に渡す方法もあります。

「同じ部活で活動していた人が亡くなったので、部全体でお金を集めて不祝儀を出す」という場合は、不祝儀の表書きに3名(まで)の名前を書きます。そのうえで、左下に「外一同」などのように書き添えます。また、ここに書けなかった人の名前は、実際に出した人の名前を書いた紙を一緒に入れておいてもよいでしょう。

代理で出席する場合は、「本来出席すべきだった相手と、代理を務める人間の関係性」によって書き方が異なります。

配偶者が代理を務める場合は、まずは「本来出席すべきだった人の名前を書いて、さらにその左側に「内」と書き添えます。つまり、代理を務めた人間の名前は記しません。

「会社の人が行くはずだったのに、その人がどうしても行けず、部下が代役を務めることになった」という場合は、

①まず右端に会社名を入れる

②その横、中央の位置に、本来行出席すべきだった人の名前をフルネームで入れる

③左下に、「代」と書き添える

というやり方をとります。配偶者の代理かそれ以外かで、同じ「代理人」であっても、書き方が異なってくるのです。

【内袋】

内袋に明確な「ルール」はありません。ただ、不祝儀を受け取る人は非常に多くのこれをさばくことになります。また現在は即日返しの風習が広まってきたとはいえ、高額すぎる不祝儀を頂いた場合は後日の香典返しも必要になります。

このようなときにかかる手間を少なくするために、内袋には「この不祝儀袋にはいくら入っているか」「出した人間はだれか」を明記してあげるとわかりやすいでしょう。

内袋の表には、「金参萬円(旧漢字で書くのが一般的だが、現在の漢字でも構わない)」と書きます。そして裏側に、名前と住所を記します。

なお内袋に「できることがあったら何でも言ってね」などのように書き添えておくと、より良いでしょう。

<不祝儀袋の選び方>

「不祝儀袋の書き方」について解説してきたので、ここでは「不祝儀袋の選び方」について解説していきます。

【袋】

不祝儀袋のデザインも、宗教によって異なります。

仏教の場合は、ハスの花などが入った封筒を選ぶことができます。水引(後述します)のついたものも選ぶことができますから、選択肢は非常に広いといえるでしょう。もちろん、白い封筒+水引の形を選んでも問題ありません。

なお100円ショップなどで不祝儀袋を買い求めると、非常によく「表書きや名前を書くための細い短冊」がついてきます。この短冊ではすでに表書きが印刷されているのですが、その内容が「御霊前」「御仏前」などになっています。そのため、仏教の葬儀の場合は、自分で表書きをする必要すらなくなることも多いといえます。

神式の場合は、ハスの花やユリの花の入ったものは使いません。これらの花は、仏教やキリスト教と非常に関わりの深いものだからです。

神式の場合の不祝儀袋は、「真っ白の無地の袋に、水引がつけられているもの」一択です。

キリスト教の場合は、十字架やユリの花などが入ったデザイン性の高いものを選ぶことができます。なおキリスト教においては水引は必須ではありませんから、これがついていないものを選んでもよいでしょう(ただし、「キリスト教の場合は、水引がついていたら絶対にNG!」というわけではありません。

【水引】

水引には地方差があります。

非常に珍しいものですが、黄色と白を掛け合わせた水引をつけるところがあったり、水色と白を組み合わせる水引を用いたりするところもあります。

ただ、原則としては「黒と白、あるいは黒と銀、もしくは双銀の水引」が用います。また水引の形は、「もう二度と同じことが起きませんように」とう願いが込められた「結び切り」のものとします。

【ふくさについて】

ふくさは、「弔事用は寒色系の、慶事用は暖色系の」ものを選ぶというマナーがあります。つまり葬儀のときには青色や紺色のふくさを使う必要があるということです。

ただし、紫のふくさは、慶弔両方で使えるものです。

なおふくさには「ポケット式」「包み式」の2つがあります。より正式なのは後者だと言われていますが、現在は前者でも問題になることはほとんどないでしょう。

不祝儀のマナーはいろいろありますが、迷ったのなら、

①表書きは「御霊前」

②不祝儀袋は無地

③黒白の結び切りの水引をつける

④紫色のふくさに包んでいく

とするとよいでしょう。この方式なら、どの宗教でも対応できます。

不祝儀に関わるマナーは、数多くあります。

事前にしっかり把握しておきたいものですね。