〔あおき葬祭コラム〕第54回:忌中と喪中の違いと、「法事」の意味について

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

人が亡くなると、多くの人は喪に服し、その死を悼み、またその行き先が安らかであることを祈ります。そのための機会として、忌中と喪中があり、法事があります。

ここでは、「忌中と喪中の違い」「法事の意味」について取り上げます。

なお、「法事」は仏教における追悼行事を指します。そのためここでは基本的には仏教のみに焦点をあてて、解説をしていきます。

<忌中と喪中の違いとは>

よく混同されてしまうのが、「忌中」と「喪中」です。両方とも「亡くなった人のために喪に服す期間であること」は変わりありませんが、その性質や長さは異なります。

【忌中】

忌中とは、四十九日法要が終わるまであたりの期間をいいます。死の穢れがほかに及ばないようにと考えて身を慎む期間でもあります。

もともと日本では神道と仏教が一体化していたのですが、神道の持つ「死は穢れである」という考え方がこの「忌中」になり、神仏分離が行われた後も仏教の考え方として残ったのだとされています。

また現在では、「残された家族が、世事に煩わされることなく、静かに落ち着き、大切な人が亡くなったことを受け入れていけるようにするまでの時間」とも解釈されます。

忌中期間は、新年のあいさつやお祝い事は避けます。たとえば七五三などの催し事も避けるべきだとされていますし、結婚式への参加も慎むのが基本です。

また忌中の考え方は神道の影響を強く受けているものであるため、神域・聖域である神社へのお参りをしてはならないとされています。ただし例外的に、「鳥居の前で手を合わせるくらいならばよい」とされることもあります。なお仏教においては死は穢れであるとはしないため、お寺にお参りすることは問題ありません。

お中元やお歳暮に関しても、忌中ならば控えた方が良いでしょう。人によっては、旅行や飲み会を控える場合もあります。

【喪中】

「喪中期間」には、忌中期間も含まれます。亡き人の死を悼み謹んで過ごすという考え方に代わりはありませんが、期間はより長くなります。その反面、「してはいけないこと(すべきではないこと)」の制限は忌中期間よりも少なくなります。

明治時代においては、喪中期間は法律による定められていました。関係性によって服喪期間が定められていたわけです。そのような法律は現在では撤廃されていますが、それでも、最大で1年間程度まで喪中期間とすると解釈されることが多いといえます。

喪中期間でも、年賀状を出したり新年のあいさつをしたり……といったお祝い事は避ける傾向にあります。結婚式に関しても参列をしないとするケースが多くみられますが、親しい人の結婚式などの場合は参列しても問題ないと考える人もいます。

また、喪中期間の場合は神社にお参りをしても問題ないと考えられています。

旅行や飲み会に関しては、「絶対に出てはいけない」ということはありません。本人の気持ちが楽になるのであれば、はめを外さない程度に楽しんでもよいでしょう。

もっとも上記で挙げた「忌中と喪中」の考え方は、ご家族によってその解釈が異なるものです。

結婚式を例にとると「故人が非常に楽しみにしていて、自分が死んだとしても滞りなく挙げてほしいと希望していた」などのような場合は、忌中期間であっても結婚式を行ったり、参列したりすることもあります。

また現在では宗教への帰属意識が薄まってきたこともあり、「とりあえず仏教で葬儀を行ったが、忌中や喪中のことは特に意識しない」と考えるご家庭も多くみられます。

このような解釈・感覚の違いには、正解・不正解はありません。

そのため上記で紹介した例は、あくまで「一般論」としてとらえるようにしてください。

何よりも大切なのは、故人とご家族の意向なのです。

<法事の種類について>

人が亡くなったとき、仏教ではよく法事(法要)を行います。これは、行われるタイミングによってその意味が異なります。

それについて解説していきます。

【初七日法要】

命日から数えて、7日目に行われる法要です。故人が三途の川にたどり着いたタイミングで行うとされているもので(※浄土真宗以外)、ご家族だけではなくご親族も集まって故人の旅が平らかであることをお祈りします。

一般的に、ご僧侶による読経が行われ、その後に食事を行うことが多いといえます。

ただ現在では、この初七日法要も簡潔化されており、「火葬をした日(通夜の翌日、つまりは葬儀・告別式を行った日)に、一緒に初七日法要まで済ませて、その後で食事を食べる」というやり方がよくとられるようになりました。この「火葬をした日に初七日法要まで行う」とするやり方は、特に「繰り上げ初七日法要(繰上初七日法要)」とも呼ばれます。

【四十九日法要】

四十九日法要は、故人が亡くなってから49日目に行われる法事です。ただし「49日ぴったり」に合わせて行うことは難しいため、現在では「49日に近い土日のいずれか」に合わせて行われることも多くなりました。ただし、「49日直前の土日」に行うことはあっても、「49日を過ぎた後の土日」に行われることは基本的にはありません。

故人が成仏することを願って行われる法要であり、このときに納骨も行うご家庭が多くみられます。

仏教ではこの四十九日法要を以て「忌明け」とし、徐々に日常の生活に戻っていくのが一般的です。かつては「四十九日が済むまでは、肉や魚などは食べない」とされていましたが、現在は初七日法要の後の食事を「精進落とし」と解釈することも多く、このときが済めば肉や魚を食べても良い、と解釈するケースも増えています。また、地域やご家族の考え方によっては、「そもそも通夜~葬儀・告別式の日であっても、肉や魚も気にせずに食べる」とすることもあります。

なお、初七日法要と四十九日法要の間には、

・二七日法要

・三七日法要

・四七日法要

・五七日法要

・六七日法要

がありますが、現在ではこれを行うご家庭はほとんどみられません。

【一周忌】

故人が旅立ってから、満1年目のときに行われる法要です。

このときにも、ご家族やご親族、ご友人で亡き人の魂を弔います。年忌法要のなかでも最初の1回目となるものであり、比較的大規模に行われることが多いといえます。

読経や焼香、法話ののちに、食事をとり、解散となります。

また四十九日法要で納骨を行わなかった場合、この一周忌で納骨を行うケースも多くみられます。もっとも納骨をするタイミングには明確な縛りはないため、一周忌を過ぎた後に行ってもまったく問題ありません。

【三回忌】

「3」とされていますが、三回忌を行うタイミングは「故人が旅立ってから満2年目のタイミング」です。つまり2021年の7月に亡くなった場合、一周忌は2022年の7月に、三回忌は2023年の7月に行うことになります(※本来は「命日」から換算しますが、現在は「命日ぴったり」に行う必要はなく、その直前の土日などで行えばよいとされています)。

三回忌も、ご家族やご親族で行うことが多いといえます。ご友人を招いて行うこともありますが、このあたりはご家族の考え方によるでしょう。

流れとしては、一周忌のときと同じように、読経や焼香、法話の後に食事となります。

【七周忌】

故人が旅立ってから満6年目のタイミングに行われます。

ご家庭によって考え方は異なりますが、七周忌になると、ご友人や知人は呼ばず、ご家族とご親族のみで終わらせることが多いといえます。

読経や焼香、食事などは行われますが、規模としては、比較的小さいものになる傾向にあります。

また七周忌をもって「弔い上げ」とし、それ以降は法要をしない……とするケースもよくみられます。

忌中や喪中、法事は故人に向き合う機会です。大切に向かい合いたいですね。