〔あおき葬祭コラム〕第36回:お彼岸について~春と秋、2回のお彼岸とそのいわれ

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ

仏教の行事として、「お彼岸」があります。

これは春と秋の2回にわたって行われているものであり、ご先祖様の供養を行うことを目的としたものです。

今回はこの「お彼岸」について解説していきます。

<お彼岸とはいつのことを言う? お彼岸という言葉の意味とは>

お彼岸は、年に2回訪れます。

春のお彼岸と秋のお彼岸です。

春のお彼岸は春分の日を真ん中に挟んだ前後3日間の1週間の期間を、秋のお彼岸は醜聞の日を真ん中に挟んだ前後3日間の1週間の期間を指す言葉です。

なお春分の日と秋分の日は、「毎年〇日」と決められているものではなく、国立天文台が毎年発表しているものです。なお、2021年の春のお彼岸は3月17日から始まり、3月20日を春分の日とし、3月23日をもって明けます。秋のお彼岸は9月20日から始まり、9月23日を秋分の日とし、9月26日をもって明けます。

「暑さ寒さもお彼岸まで」ということわざを耳にしたことのある人も多いかと思われますが、これは、「暑さも秋分の日までには落ち着き、寒さも春分の日までには落ち着く」という意味です。春分の日と秋分の日は、お彼岸期間の中心にあたるものであるとともに、季節の終わりや訪れを意味するものでもあります。なお春分の日と秋分の日は、昼の長さと夜の長さが同じになります。

この期間を、「お彼岸」としたことには理由があります。もともと「彼岸」という言葉は、サンスクリット語の「波羅蜜多(バーラーミータ)」に由来します。「バーラー」は彼岸の世界であり悟りの世界であることを示す言葉であり、「ミーター」は此岸(しがん)であり迷いのある世界をいいます。なお「此岸」という言い方は「彼岸」に比べるとややなじみの薄い言葉ですが、「私が19歳のときに、母は此岸の人ではなくなってしまった」などのように表現することもあります。此岸とは、私たちが生きている世界を指す言葉です。

春分の日や秋分の日にご先祖を供養することで、迷いのない、悟りを開いた彼岸に近づけるとする考えが、現在の「お彼岸」に繋がっています。

<お彼岸の歴史と仏教との関わり>

お彼岸の歴史は、今から1200年程度前にまでさかのぼることができるといわれています。

806年に、日本で初めて彼岸会(ひがんえ)が開かれたと記録に残っています。記録に残っている最初の彼岸会が806年ですから、実際にはその前から行われていたのかもしれませんが、この年に亡き親王のためにお経を読むようにという命令が諸国の僧侶に下されました。

歴史上のことですから真偽の程を明確に語ることは避けるべきですが、無実の罪で憤死したとされる早良親王の祟りを鎮めるために行われたのが最初だとされています。

お彼岸は現在では「仏教行事である」と解釈されることが多いといえます。

たしかに「供養」という考え方は、仏教に由来するものです。神式でもキリスト教でもまたそれ以外の宗教でも、亡き人への弔いを「供養」と呼ぶこともありますが、これは基本的には仏教を由来とする言葉だからです。ご先祖様のことを思い、追悼供養するお彼岸が、「仏教行事である」とされるのは無理からぬことでしょう。

しかし上でも述べたように、もともと「お彼岸」は「亡き親王の祟りを鎮めるために行われたもの」です。

そのためお彼岸は、ほかの仏教国では積極的には行われていません。海外から伝わってきた宗教や文化がそれを取り入れた国のかたちになじむように解釈・変化していくことは往々にしてありますが、お彼岸もまた、そのような行事のうちのひとつだといえるでしょう。

<お彼岸のときに行われてきたこと、お彼岸の日に行うこと>

ここまで、「お彼岸の期間や考え方、成り立ち」について解説してきました。

それでは実際のお彼岸のときにはどのようなことが行われるのでしょうか。

1.祈りを捧げる

「お祈りをする」というのは、仏教に限らず、あらゆる宗教の基本となるものです。仏教では西を「西方浄土」としていますから、その西側に向かってお祈りを捧げるのが一般的です。

お彼岸などの行事においては、「普段はまったく祈りを捧げていない」という人であってもお祈りを行うようにしていたともされています。

また現在はお彼岸を家族だけで済ませるご家庭も多くみられますが、「お彼岸のときにはご僧侶様をお招きし、家でお経をあげていただく」とするご家庭もあります。この場合はお布施(30000円~50000円程度)と、お車代が必要です。

2.お墓参りに行く

「お祈りをすること」と同様に、お彼岸においてもっとも大切なことだとされているのが「お墓参りに行くこと」です。春のお彼岸と秋のお彼岸、そしてお盆の時期にはお墓に行くという人も多いのではないでしょうか。ご先祖様の供養を行うという意味では、この「お墓参り」が非常に重要です。

お墓でご先祖様にあいさつをし、一緒に語らうとよいでしょう。またお話をするだけではなく、お墓やお墓周りの清掃を行うことも重要です。簡単な清掃などは墓地の管理者が行っている場合が多いのですが個別の墓所までには立ち入らないケースが大半ですし、屋外にある花立てなどは非常に汚れやすいものです。これらをきちんと掃除をしましょう。なお墓石によっては使う洗剤が限られてくるので、事前に確認しておいた方が安心です。

3.仏壇や仏具の掃除をする

仏壇や仏具の掃除を行うのも重要です。お墓をきれいにするのと同じ理由で、ご先祖様に気持ちよくお過ごしいただくために丁寧に行いましょう。

仏壇の掃除方法を確認してから行うようにすることをおすすめしますが、基本的にはからぶきなどで対応した方がよいでしょう。

4.お供え物をする

掃除が済んだらお供え物をします。特段こだわりがなければ、一般的な物価を捧げましょう。基本的には、棘のある花や匂いの強い花などは避けるべきとされていますが、現在は「故人が愛した花ならば良いのではないか」とする考え方もよくみられます。実際に、故人が好きだったから……と、バラの花などを選ぶご家庭もあります。ただし、「自分は家族ではないが、お花を捧げたい」ということであれば、やはり仏花やカーネーション、ユリなどの定番の花にしておいた方がよいでしょう。

なお、お彼岸のときにはあんこを使ったお餅である「ぼたもち」「おはぎ」をお供えします。「ぼたもち」は「牡丹餅」から、「おはぎ」は「お萩」からきています。お餅の形が牡丹に似ていたことから「牡丹餅」とされたぼたもちは春のお彼岸に、秋の七草である「萩」からつけられた「おはぎ」は秋のお彼岸に備えるものだとされています。

ちなみに「ぼたもちはこしあんを使ったものだが、おはぎは粒あんを使う」「ぼたもちは丸く、おはぎは俵型である」とする説もあります。

ただこのあたりの名称・作り方・形状に関しては、地域やご家庭によって差があります。このため明確に分けて語られることはあまりないでしょう。それぞれの地域・ご家庭にあったものを用いればよいと思われます。

また現在はぼたもち・おはぎ以外にも、故人が好きだったものなどをお供えすることもよくあります。

※納骨堂やお墓によっては、「お供え物はダメ」「お花のみOK」「供えても構わないが、すぐに持ち帰ること」などの規則がある場合もあります。必ず事前に確認をしてください。

春のお彼岸も、もうすぐそこ。

ご先祖様に思いをはせて、しっかりとお迎えをしたいものですね。