冠婚葬祭の場で使われる「袱紗(ふくさ)」は、大人ならば1枚は持っておきたいものです。
不祝儀袋にしろ御祝儀袋にしろ、直で持っていくことはバッドマナーとされていますし、ビニール袋から出すのもいけません。不祝儀袋(御祝儀袋)は、袱紗(ふくさ)に包んで持っていくのが正式です。
今回はこの「袱紗(ふくさ)」について取り上げましょう。
<袱紗(ふくさ)を使う意味について知って置こう>
「袱紗(ふくさ)」は、不祝儀袋や御祝儀袋を持っていくときに使うものです。
不祝儀袋や御祝儀袋を直接鞄の中に入れていくことはマナー違反とされており、袱紗(ふくさ)に包んでいくのが正式です。受付でこの袱紗(ふくさ)をほどき、不祝儀袋や御祝儀袋を受付の人にお渡しするのです。
袱紗(ふくさ)は、不祝儀袋や御祝儀袋が汚れてしまったり、水引が崩れてしまったり、シワになってしまったりすることを防ぐためにあります。また、不祝儀袋や御祝儀袋の中に入っている現金を、「不祝儀袋や御祝儀袋と袱紗(ふくさ)の二重に包んで、相手に敬意や礼節を表すこと」を表すものでもあります。
10代の頃は、不祝儀袋や御祝儀袋にしろ、持っていく機会はそれほど多くはありません。しかし20代以降になると、結婚式も葬儀も増えていきます。そのため大人ならば1枚は袱紗(ふくさ)は持っておくべきでしょう。
<袱紗(ふくさ)の種類について>
袱紗(ふくさ)には、さまざまな種類があります。まずは「材質」についてみていきましょう。
高級な袱紗(ふくさ)は、絹で作られています。また、レーヨンやポリエステルで作られているものもあります。長く使うことを考えていたり、ある程度しっかりしたものを持ちたいと考えていたりするのであれば、正絹で作られたものが良いでしょう。正絹で作られたちりめんのものを買えば、間違いはありません。特に40代以降で、新しく袱紗(ふくさ)を買い求めるのであれば、このようなものが望ましいでしょう。
ただし、レーヨンやポリエステルのものを使ってはいけないというわけではありません。
これらは価格も安く、100円ショップなどでも売られています。冠婚葬祭の場で袱紗(ふくさ)が主役になることはありません。また、結婚式ならばともかく、葬儀の場合は急場で用意しなければならないこともあるでしょう。そのような場合は、とりあえず100円ショップで安価な袱紗(ふくさ)を買い求める……というやり方をとってもあまり問題にはなりません。
なお、正絹のものは、2000円~10000円程度で買うことができます。
また、袱紗(ふくさ)には「形による種類の違い」もあります。
それについてみていきましょう。
1.風呂敷タイプの袱紗(ふくさ)
現在、非常によく見られるのがこのタイプの袱紗(ふくさ)です。台がついているものと、爪がついているものの2種類があります。
1枚の布で作られており、不祝儀袋や御祝儀袋を包んで持っていきます。受付の前でほどき、お渡しすることになっています。
もっとも一般的な形であり、これを選べば間違いはありません。
2.金封タイプの袱紗(ふくさ)
金封(封筒)のようになっており、ポケットに不祝儀袋や御祝儀袋を入れて閉じるタイプのものです。
袱紗(ふくさ)の包み方をマスターしていなくても使うことができますし、ある程度硬さもあるので不祝儀袋や御祝儀袋が折れることもありません。開閉も楽ですから、受付の前でごたつくこともありません。現在よくみられるようになってきた形であり、利便性の良さが人気です。
ただしこの金封タイプの袱紗(ふくさ)は、「簡略化されたもの」「簡易的なもの」です。そのため、「正式な袱紗(ふくさ)ではない」と考える人もいます。ある程度年齢を重ねたのなら、買い替えることを検討してもよいでしょう。
3.掛袱紗(ふくさ)タイプ
四角に房がついていて、お盆の上に掛けるようにして使う袱紗(ふくさ)です。
もっとも格式が高い袱紗(ふくさ)であり、結納金などを持っていくときはこの掛袱紗(ふくさ)が使われます。
非常に特別なものであるため、現在ではこれを日常使いする人はほとんどいません。僧侶にお布施を渡すときにこの掛袱紗(ふくさ)を使えばより丁寧ではありますが、一般的な袱紗(ふくさ)でも問題はないとされています。
<袱紗(ふくさ)の色と模様を考えよう>
袱紗(ふくさ)の色には、明確な決まりがあります。
慶事(おめでたいこと。結婚式など)に持っていく袱紗(ふくさ)の場合、暖色系の色を選ぶのがマナーです。たとえば、赤色やピンク色、オレンジ色などです。
対して弔事(葬式など)では、寒色系の色を使うのがルールとされています。たとえば、紺色や藍色、灰色などです。
この違いは明確で、慶事のときに弔事用の袱紗(ふくさ)を持っていってはいけませんし、弔事のときに慶事用の袱紗(ふくさ)を持っていくことがあってはいけません。
ただし、「紫色」だけは慶事でも弔事でも使うことができます。紫色は高貴な色とされており、年齢性別を問わずに使えるものです。そのため、新しい袱紗(ふくさ)を買い求めるのであれば、紫色のものを選ぶとよいでしょう。
袱紗(ふくさ)の模様に関しては、無地のものを選ぶのが基本です。
ただし、「慶事用だ」と割り切っているのであれば、鶴や亀などのおめでたい柄が織り込まれているものを選んでも構いません。
なお袱紗(ふくさ)は無地のものがもっとも使いやすいのですが、自分の名前などを刺しゅうしてもらうのは問題ないとされています。
「新しく袱紗(ふくさ)を買うのだが、どんなものがいいか?」を簡潔にまとめるのであれば、
・紫色で
・正絹で
・無地で
・風呂敷タイプのもの
を選ぶとよい、ということになります。
<包み方のマナーについて>
最後に、袱紗(ふくさ)の包み方のマナーについて解説していきます。
弔事の場合と慶事の場合では、袱紗の包み方が異なります。
【弔事】
1.袱紗(ふくさ)をひし形に広げる
2.右側から折りたたむ
3.次に下側を折りたたむ
4.上側をたたむ
5.左側をたたむ
6.完成
【慶事】
1.袱紗(ふくさ)をひし型に広げる
2.左側から折りたたむ
3.次に上側を折りたたむ
4.下側をたたむ
5.右側をたたむ
6.完成
弔事と慶事では、いろいろなことを「逆の手順」でやっていきます。このため、袱紗(ふくさ)の畳方も、弔事と慶事では逆になるのです。また広げ方も、弔事の場合は左側に爪が、慶事の場合は右側に爪が来るようにして開くのが正式です。
この「包み方」をしっかり覚えておくことで、より美しく、より丁寧に不祝儀袋や御祝儀袋をお渡しすることができます。
(茶道で袱紗を使う場合も包み方のマナーがありますが、ここでは取り上げません)。
「袱紗(ふくさ)」は、それ自体が主役になることは決してないものです。また不祝儀袋や御祝儀袋とは異なり、表書きや水引のマナーもないため、ついいい加減にとらえてしまいがちなものでもあります。しかし袱紗(ふくさ)には不祝儀袋や御祝儀袋を包むという大切な役目がありますし、袱紗(ふくさ)自体にも守るべきマナーがあります。
もちろん一番大切なのは、弔意やお祝いの気持ちを表すことです。ただそれらをより丁寧に表すためのアイテムとして袱紗(ふくさ)があり、またそれらをより丁寧に表すためのマナーとして「袱紗(ふくさ)に関係するマナー」があるのだと考えておいてください。