仏教の儀式のひとつとして、「年忌法要」があります。
この年忌法要は仏教徒ならば比較的なじみ深いものであり、参列した経験のある人も多いことでしょう。
ここではこの「年忌法要」の考え方と、年忌法要を行うタイミングについてお話していきます。
<年忌法要は、亡くなった人のために行う供養のこと>
「年忌法要」とは、決まった年に行う法要のことです。この年忌法要は、主に「亡くなった人が安らかであるように」との願いを込めて行う供養であり、故人の冥福を祈るものです。
四十九日までに行う供養は特に「追善供養」と呼ばれ、忌明け後の供養は「年忌法要」と呼ばれています。
この日にはみんなで集まり、ご僧侶様に読経をしていただき、お墓参りを行い、食事などを行います。現在では「亡くなった人のための法要」という性質とともに、「亡くなった人を偲び、ゆっくりと語り合うための非」という性質も持つようになりました。旅立った大切な人に向き合い、同じ思いを共有した人とじっくり話ができる機会として、「年忌法要」があるのです。
仏教の場合は、まずは一周忌、そして三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌……と年忌法要をあげていくことになります。
なお一周忌は、「亡くなってからちょうど1年が経ったタイミング」を指します。その翌年が「三回忌」となります。「三回忌」は「3年め」ではない点に注意してください。
なお、現在は「亡くなった当日に全員で集まること」は(偶然土日に重なっていたのでもない限り)難しく、現実的ではありません。このため、亡くなった日の前の週の土日に行われるかたちが一般的です(例:2019年の12月4日の水曜日に亡くなった場合、一周忌は2020年の2020年の11月28日の土曜日もしくは11月29日の日曜日に行う)。
また、年忌法要は、「亡くなった当日から見て早い日にち」に行うことはあっても、「亡くなった当日を過ぎてから行うこと(上記の場合は12月5日の土曜日や12月6日の日曜日)」に行うことは基本的にはありません。
「法要」という言葉は仏教の儀式を指すものですから、神式やキリスト教の場合は「年忌法要」は行いません。しかし年忌法要と似た性質を持つものとして、「式年祭・霊祭」「追悼ミサ」が行われます。
神式の場合は、1年・2年・3年・5年・10年……のタイミングで行われ、それ以降は10年ごとの刻みで行われます(一般的には、長くても50年まで)。
キリスト教のカトリックの場合は、1年めに昇天日のミサを行うほか、11月2日には亡くなった人のためのミサを行います。
プロテスタントの場合は、1年め・3年め・5年めのタイミングで、記念集会を行います。
「年忌法要」とは異なるものですが、「亡くなった人を偲び、集まる」という気持ちには変わりがないのです。
<年忌法要はいったいいつまで行う?>
さて、ここからは「年忌法要はいつまで行うか」について考えていきましょう。
仏教の偉人である親鸞聖人などの場合は、750年たった今でもなお「大遠忌」などのようなかたちで法要が行われています。
しかしこれはあくまで特例です。
一般家庭の場合、
・一周忌
・三回忌
・七回忌
・十三回忌
・十七回忌
・二十三回忌
・二十七回忌
・三十三回忌
・五十回忌
までを行って、弔い上げとします。三十三回忌で弔い上げとするか、それとも五十回忌で弔い上げとするかは、各家庭によって異なります。弔い上げをすれば、それ以降の年忌法要は行わないことになります。
通常、弔事で使う不祝儀袋は黒白、あるいは双銀や黄色黒、水色と白などの結び切りの水引を使いますが、弔い上げ(特に五十回忌)の場合は紅白の結び切りの水引を使うこともあります。これは、「故人を早くに亡くしたが、五十回忌(あるいは三十三回忌)まできちんと供養ができた。それもこれも、みんな故人が大切に可愛がってくれたおかげだ」という気持ちを表すためともいわれています。
もっとも、現在は五十回忌(三十三回忌)まではやらない……というご家庭も増えています。「十七回忌で終わりとする」「七回忌までは親族を呼んで行うが、十三回忌は家族だけで行う。そして十三回忌で弔い上げとする」などのようなやり方です。
葬儀のかたちや弔い方のかたちが変わりつつある今、「五十回忌(三十三回忌)まで行わない」という選択肢も尊重されるようになっています。特に故人が生前、「自分の弔いは最小限で良い」と語っていた場合などは、早い段階で切り上げられることもあります。
ご家族が五十回忌(三十三回忌)まできちんとやりたいと考えるのであればやっていけばよいですし、またご家族や故人が「十三回忌(あるいはそれよりも短く)までで良い」と考えるのであればその心に従えばよいでしょう。
葬儀についても同じことがいえますが、年忌法要にも、「絶対にこうしなければならない」というルールはありません。
ただ個々人によって考え方は異なりますから、親族同士でよく話し合い、納得できる結論を出す必要はあります。
<年忌法要の流れについて>
年忌法要は、葬儀とは異なり「だれでもお参りに来ていただけるもの」ではありません。基本的には喪主(喪家)側が来てほしい人に案内状を出し、受け取った人が出欠の返事を出すかたちをとります。
案内状には
・だれの年忌法要か
・場所
・時間
・いつまでに返信が必要か
・返信先の情報
などを記載しておきます。これは年忌法要の1か月~1か月半程度前に出します。また年忌法要には返信用のハガキなどを同封し、2週間前程度までに出欠の返事をしてくださいと案内をしましょう。
ここからは、年忌法要の1日の流れについて紹介していきます。
年忌法要には、絶対的なルールはありません。ただ、一般的な年忌法要の流れは以下のようなものになります。
1.僧侶入場~施主のあいさつ
年忌法要は、自宅や葬儀・法要ホール、あるいは寺院などで行われます。また、まれにホテルが会場に選ばれる場合もあります。
ご僧侶様が入場したら、施主による挨拶が行われます。
2.読経と焼香が行われる
ご僧侶様による読経が行われます。また、焼香も行います。焼香は、故人との関係が深かった順番に行っていきますが、スペースなどの都合で多少前後することがあります。
3.法話
ご僧侶様による法話が行われます。仏教の思想に基づいた死生観についての法話が多く、また故人の人柄について触れることもあります。
4.施主による挨拶
御僧侶様が退場されたら、施主による締めのあいさつが行われます。
5.墓への移動
お墓に移動し、お墓を掃除し、お墓に手を合わせます。一周忌のタイミングで納骨をする場合は、この段階で納骨式が行われることもあります。
6.会食会場への移動
お墓から会食会場へ移動します。マイクロバスを利用したり、自家用車で向かったりします。
7.会食
故人のことを偲びながら会食を行います。ご僧侶様が参加することもありますが、5が終わった時点で辞することもあります。
8.締めのあいさつ~解散
会食が終わりに近づいたら、施主が挨拶をして解散です。
これはあくまで「よくみられる一般的な年忌法要のかたち」です。このため、すべてのケースがこの流れに当てはまるとは限りません。お墓参りを省略したり、会食を省略したりするケースもあります。
どのようなやり方が良いかは、家族みんなでよく話し合って決めていくとよいでしょう。