〔あおき葬祭コラム〕第6回:今は亡き遠い人を偲ぶ~この時期に行われるさまざまな行事

投稿日 カテゴリ おあきの葬祭コラム, お知らせ, コラム

「自分の近しい人が亡くなること」は、非常に大きなショックです。特に亡くなってからの日がまだ浅いと、その死を受け入れることができずに混乱する人もいることでしょう。このような痛みを抱えることは非常につらいものですが、時間が経ったからといって完全に消化をしきれるとも限りません。

ただそれでも、生きている人は亡くなった人のことを思い、彼らを慰めることで少しずつその死を受け入れていこうと努めてきました。

また、たとえ自分と面識のない相手であったとしても、痛ましい事件や事故、災害で亡くなった人のために祈りを捧げたいと考える人も多くいます。

 

そのための方法として、

・合同慰霊祭

・お盆(盆踊り・献灯)

・灯籠流し

などがあります。それぞれ解説していきます。

 

 

<亡くなった方のお心を慰め、その死を悼む合同慰霊祭>

 

「慰霊祭」とは、亡くなった人の心に寄り添い、その功績や徳を偲び、御魂を慰めるために行う儀式のことです。大勢の人を対象として、また多くの人が参列して行う慰霊祭を、特に「合同慰霊祭」といいます(単に「慰霊祭」とだけ書かれることもあります)。

 

この「合同慰霊祭」は、非常に多くのところで行われていますし、そのかたちもさまざまです。

 

・戦死者(戦没者)のための合同慰霊祭

終戦記念日によく耳にする「戦死者(戦没者)のお心を慰める合同慰霊祭」は、全国各地で行われています。

これは個々人の悲しみに寄り添うための合同慰霊祭であるとともに、恒久的な平和を願うためにも行われています。

戦死者(戦没者)のための合同慰霊祭では、国歌斉唱や献花などが行われることが多く、また地域の少年少女合唱団による合唱が行われるなどの催し物を伴うこともあります。

 

・災害被害者のための合同慰霊祭

日本は自然災害の起こりやすい国だといわれています。特に有名なのは「地震」で、これにより多くの人が命を落としてきました。

このような災害被害者を弔うための合同慰霊祭も、各地で行われています。特に、学生や教員が多く被災―亡くなった学校などでは、学校だけで合同慰霊祭を行うこともあります。

このときには、故人の人柄をしのばせるスピーチなどがよく行われます。また、比較的近年に起きた災害(1年以内など)の場合は、学友からの弔事が読み上げられることもあります。

 

・病院で行われる合同慰霊祭

かつては自宅で息を引き取る人も多かったのですが、現在は病院で息を引き取る人が8割を超えているとされています。病院は病気やけがを治すところであると同時に、人が息を引き取るときの居場所でもあります。

このため病院などでは、定期的(統計をとったわけではありませんが、体感的には1年刻みが多いように思われます)に合同慰霊祭を行うところも多いといえます。

死因の如何、年齢、性別、人種、そのほかさまざまな要素による区別などは設けず、ひとしく祈りを捧げるこの合同慰霊祭です。

 

・会社組織あるいは公的組織で行われる合同慰霊祭

会社あるいは公的組織で合同慰霊祭が行われる場合もあります。これは大きく分けて2通りあります。

1.遺品などを扱う会社で行うもの

2.自分たちの組織に属する人の死に対して行うもの(特に殉職者を対象とすることも多い)

たとえば遺品整理の会社などでは、自分たちが手掛けた遺品の持ち主への合同慰霊祭を行うことがあります。これは故人を弔う儀式であるとともに、「自分たちが接しているのは、『物』ではなく『人』なのだ」という認識を持つためのものでもあります。

 

警察や消防などの、危険で、かつ公共の利益のための任務にあたる人のなかには、職務中に殉職というかたちで命を落とす人もいます。彼らに対する追悼と哀悼の意を示すために行われる合同慰霊祭は、多くの遺族を招いて行われるものです。

 

 

このように、「合同慰霊祭」はさまざまな人に対して、さまざまな団体が、さまざまな理由で行うものです。ただ2020年現在は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響があり、「いつもならば多くの人を招いて行うが、今回は関係者のみ」などのようにしているところもあります。

 

 

<お盆のときに行われる「盆踊り」と「献灯」について>

お盆のときには、提灯や精霊馬(精霊牛)などのさまざまなアイテムが用いられます。また、お盆ならではの文化もみられます。そのひとつが、「盆踊り」です。

 

盆踊りは、だれもが一度は耳にし、目にしたことのあるものでしょう。その歴史は大変古く、盆踊りについてのもっとも古い記載は1400年代の記録であるとされています。600年以上の歴史を持っているものなのです。

盆踊りは、お盆のときに帰ってきた先祖の御魂を慰めるために踊られたのがその由来だとされています。

 

ちなみに、「踊り念仏」という文化もあります。これは太鼓などを叩き、また踊りながらお経を唱えるものです。これの由来はさらに古く、750年ほど前にまでさかのぼることができます。当時まだ庶民には行きわたっていなかった仏教の文化を、市井の人にもわかりやすく広めるための行いであったとされており、これが盆踊りのルーツになったとみる見方もあります。

 

現在の盆踊りは、「御魂を慰めるためのもの、供養のために行うもの」というものだけでなく、「みんなで楽しむもの」という性格も持つようになりました。そのため、華やかで明るい音楽が選ばれることもよくあります。昔はこのような「派手で、華やかな踊り」が「良くないもの」として取り締まられてきたという歴史もありますが、現在では家族で一緒に楽しむお祭りのイベントのうちのひとつともなっています。

 

 

さてもうひとつ、「献灯」についても取り上げましょう。

献灯は、「お盆の時期限定」で行われるものではありません。献灯とは簡単にいえば、「灯明(あるいはその灯明を寺院などに捧げるおと)」を指す言葉です。

キリスト教でも神道でも仏教でも、「ロウソクに火をともすこと」は神聖な儀式としてとらえられ、弔事のときの必須道具としてロウソクが用いられてきました。なお仏教において灯明は、「心を照らすもの」「仏様の慈悲に思いを馳せるもの」という意味を持っています。

 

日々のお参りにもお盆の時期にも、当然ロウソクが灯されます。またこの時期に大掛かりな献灯が行われることも珍しくありません。特に鳥取県の「大献灯」は有名な催しです。

 

 

<幻想的で美しい「灯籠流し」の意味とは>

 

「灯籠流し」は「精霊流し」とも呼ばれる行事です。灯籠流しでは、明かりをともした灯籠を川に流していきます。真っ暗な夜に行われるこの灯籠流しは実に幻想的で美しく、夢と現実の境界線をあいまいにするとさえいわれてきました。

 

現在は「お盆のときに家に来てくれていたご先祖様を再度送り出すための行事」としてとらえていますが、水害で命を落とした人のお心を慰めるために行ったのが由来だともいわれています。

 

ただ現在、この灯籠流しは「川に物を流す」ということで環境負荷が大きいとして見直しをするところも増えてきています。また、流した灯籠は下流まできたら回収されるなどの対応もなされるようになりました。

 

非常に美しく、故人に静かに思いを馳せることのできるこの灯籠流しもまた、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を免れませんでした。

恒例行事となっており毎年灯籠流しを行っていた地方自治体の多くも、2020年の灯籠流しは中止……として案内をしています。

 

 

1人だけで故人に向き合い自分の近しい人を思うのは、弔いの基本です。

しかし大勢の人と、心と場を共有して旅立っていった人を悼むこともまた、思いを表す方法のひとつといえるでしょう。